そんなにクマを悪者にしてはいけない。彼らは自分の居場所にいるだけだ

doublet2005-07-18

朝、薄明と共に行動開始。


天気は今にも雨が降りそう。
昨晩、雨が降ったので下草が濡れている。
最初の目的地は、大きな大きな石英脈。
林道の横の露頭に何本も脈が見えるので、車を降りてチェック。
寝起きで、裸足にサンダルをつっかけて、露頭を見る。
石英脈というより、珪化帯に近い。
chalcopyrite, enargite がわりと見える。
硫化鉱物の粒は全般に小さい。水晶も小さい。
露頭の状況から、脈を追跡するほどのものではない。
次の目的地に向かう。


車を運転していると、なぜか足が痛痒い。

なつかしい痛みだわ。
ずっと前に忘れていた。

足を触って確認すると、むにょっとした細長いものがついている。
ヒ ル だ。

↑怒りのあまりピンぼけ。口を貼付けてうまそうに血を吸っている遺影。上の赤い点は一匹剥がした場所。


あわてて車を停めて確認したら、4匹もついていた。
ヒルの巣だったか。
ライターでさっとあぶってはずし*1、道路のアスファルトの上に落とす。
石頭でぶん殴ってぶち殺す。
命をもって償ってもらわないと、気がすまない。
足に穴が開いて血が止まらないので、絆創膏を張るが、やはり痒い。
普段はヤブに入るときは足首までの登山靴を履き、その上からズボンの裾を重ねているのでヒルの被害にはあまり遭わないのだが、今回は裸足だったのが悪かった。


次の目的地は、沢の中にある鉱脈鉱床の確認。
やはり蜘蛛の巣だらけの沢を上がると、石英脈が見え、隙間に水晶が生えている。

金属鉱物は見られず。
水晶をお土産に拾う。
つぎ行ってみよー。


次も鉱脈型。
Calcite を多く含んだ鉱石を狙って拾う。
溶かし出すといいものが出てくるかもしれないし。
石英の隙間に、赤色透明板状結晶のアグリゲイトを見つけた。
なんだろ?


あまり採れないところばっかり回っても疲れるので、行きつけの水晶産地に向かう。
「あら、お久しぶりね。ずいぶんのご無沙汰ね。何になさる?」
「すまんね。最近いろいろ忙しくてね。いつものヤツをもらおうか。」
ってな感じで。
この産地、範囲は広いが、縦横無尽に歩き回っているので、どこをどうつつけばガマが開くかはよくわかっている。
20cmのちびガマをあけて、かっこいいトッコをいくつか持って帰る。
林道で、林業関係の方に出会い、話を聞く。
おじいちゃんはこの鉱山がやっていたころ、昭和15年から鉱山で働いていたそうだ。
話が面白い。今となっては貴重な体験談。


天気が悪く、雨がぱらぱら降ってきた。
次は、比較的よく知られた鉱山の別脈を掘った沢。
林道を上がり、車を停めた瞬間にバケツの底を抜いたような雨が降ってきた。
山の神に嫌がられているようだ。
雨具は持っているが、土砂降りなのでしょうがなく次へ向かう。


次の産地はある古い資料に載っていた鉱脈鉱床。
探鉱データでは鉱脈は6条。4条は現在でも確認できる。
一番太いもので10cm。
林道の脇に脈が出ているので、車を停めて、ドアを開けながら採集できる。

べらぼうに品位が高い。どんなに低く見ても脈幅品位銅10%はあるだろう。
なんでこの脈を押さなかったのだろう。謎。
脈の構成は chalcopyrite, sphalerite, pyrite, galena の順。
いいところはほぼ純粋な chalcopyrite の塊。
ガマも多く、2cm以上の耳付き双晶の chalcopyrite も多く見える。最大3cm。
ただし、表面がみんな腐っている。真っ茶色。
表面 1 mm が腐ってしまうだけで、これほどまでに変貌してしまうのか。
無念。こんなにでかい結晶なのに。


誰か根性のある人がこの脈を3mも掘り下げてくれると、新鮮な chalcopyrite の耳付き双晶が採れるかも。


次は、最後の目的地、もう夕方の5時。
ごく小さな黒鉱鉱体。
道路脇に2mぐらいの元黒鉱鉱体が見える。

↑黒っぽく見えるところが鉱体の部分。崖の高さは5m足らず。


「元」と書いたのは、完全に腐ってボヤ化しているからだ。
硫化鉱がほとんど見えない。
この赤ボヤを分析すると、金が多く出そうだ。
こうなるとほとんど採集は望めないのだが、一つだけ、風化分解すると極端に採集しやすくなる鉱物がある。Barite だ。
Barite はほとんどの黒鉱鉱床に伴われるが、薄い板状の結晶は脆く、鉱塊を割り出して結晶を拾うことは難しい。
風化して、やっといいものが採れるのだ。
高さ3.5mぐらいの鉱体に、barite の結晶がちょぼちょぼ見えるが、手が届かない。
道路脇の露頭に車を寄せられるだけ寄せて、車の屋根に乗っかって採集。
この方法、手っ取り早いのはいいが、石を落とすと車にぶつかる。諸刃の剣の必殺技。
きれいな菱形の結晶の集合体が採れた。


深夜、延々ドライブして帰宅。
鉱山ナビゲーターを駆使して超マイナー車横付け産地ばかりを狙ったが、調子はいい。
ただし、大収穫には結びつかず。
プリンターの調子もよろし。L版用紙をカセットに入れておくと、いつでも地形図が打ち出せて、野帳にそのまま貼れるのが便利。

*1:ヒルは無理矢理剥がすと口が人体に残ってしまう。火を近づけて取るのが正しい