蛭の大産地

朝、早く起きて親父からザイルの扱いについて教えてもらう。
この人はプロなので、教え方がうまい。
道具がないとき、ザイルだけでどうやって体を支持するか、下降するかなどの特殊技術なのだが。
縛りの技術は、大変奥が深い。
シュリンゲの応用、捨て縄のうまい使い方など。


高速をがんがん飛ばして最初の産地に行く。
ここは、比較的知名度が高い産地なのだが、人があまり来ない。
その理由のひとつは、ヒル

この間はかなり苦しめられた。
今回は、水晶の内包鉱物の分析用のサンプル採集。
ヒルのベストシーズンに来てしまった。


沢沿いに遊歩道を上がると、右側の岩壁からの崖錐堆積物に水晶が混じる。
ただし、このあたりは沢のそばで、じとじととしめった下草と落ち葉が積もる。
これがくせもの。

この中にヒルが大量に生息している。
どのくらいいるかっていうと、いつでもどこでも足を止めると、尺取虫のようにヒルが何匹も靴めがけて突進してくるのが見える。ほんとに。

・・・なんかこの間来たときより増えてるんですけど。
この付近の地質の記載をした人の話では、前は夏でもほとんどいなかったという話だから、やはり増えているんだろうな。


とにかく、この産地では2分おきに自分の靴を見なければならない。
いっぺんに4匹も靴を上ってくるさまは、見ていてけっこうウンザリする。
どれからはがしてぶち殺すか、悩んでしまう。
もぐらたたきのよう。
自分を第三者の視点から観察することができなければ、この産地では採集はできない。
ゴルゴのような用心深さが必要。
岩盤にもそこそこガマが開いていて、中に水晶がいっぱい見えるのだが、こいつを採ろうとハンマーを当てているときでも、ヒルはズボンに潜り込んでいる。
どんなに疲れていても、いいガマが開いても、常に足元をみなければならない。
ある意味、かなり難易度が高い。


せっかくだからいい水晶が採りたいので、ちょっと粘って(それでも1時間だけど)採集。
ちびガマが多い。水晶はキラキラできれいだが、眺めるゆとりがない。
足元を這い上がってくる三本線のヤツラをハンマーで殴り殺すほうが最優先課題。
石を叩くよりヒルを叩いている数のほうが多いんじゃないかと。
それでも、なんとかいいものを見つけた。


ちょっといたずらして、ヤツラがどういう風に人に取り付くのかを見てみた。
どうも体温を察知しているらしく、人の気配を知ると一直線に向かってくる。
尺取虫運動だが、体を伸ばしたり縮めたりしてすごいスピードでやってくる。
取り付くときは、ほとんど靴に飛びついているように見える。
ヤツラの接着力はものすごい。
林を走って駆け抜けているあいだに、靴に何匹も張り付いているんだから。


採集が終わった。
駆け下りながら転石の上に乗り、靴をチェック。この繰り返しで下山。
何匹殺したろう。30匹以上なのは確かだ。
ああいう生き物が苦手な人がこのシーズンにここに行けば、トラウマになるのは間違いない。
奇跡的に、一匹にもご馳走しなかった。


次の場所は川原の沸石。
地獄の森からしばらく運転して、川原に到着。
川は最近の雨ですごい増水。
なんとか200mぐらい露頭と転石をチェックしたが、水が多いのであきらめた。
また今度。
そばの温泉の駐車場でジュースを飲んでいたら、地元の人とキャンパーがもめている。
キャンパーが砂利敷きの駐車場にテントを張っているのが、地元の気に食わないらしい。
まあ、どっちもどっちもなんだが、秋田からわざわざこんなところまで来ているんだから、すこし大目に見てやってもいいと思うんだけどね。
うるさい土地のものは、むかむかするぐらいうるさいからなあ。
もっとも、マナーの悪いキャンパーもむかむかするぐらい自己中心派なのだが。


最後に、明日の目的地の下見。
この産地は古い報告がある水晶産地で、とにかく山の中。
沢の出合で転石を探すと、確かに水晶がほんのわずか混じっている。
2cmぐらいで、透明。
うぉ、マジかよ。
ただし母岩ははっきりせず。
明日はこの沢を上がってみよう。


下まで降りて食料調達。
温泉に入り、寝る。
まぶたを閉じると、ヒルが印象に残って頭から離れない。