夫婦とはなんだろうか

doublet2005-09-02

今日の写真は日本式双晶を示す水晶*1
日本式双晶というのは、水晶の双晶(複数の結晶が、結晶学的に規則正しく接合しているもの)のうち、[1 1 -2 2]という面を接触面にしているものです。
c軸の交差角は 84.33度です。
ある産地のものは、二つ仲良く並んだ形状から、「夫婦水晶」と呼ばれました。
今日は、日本式双晶の形状から、夫婦関係について考察してみましょう。


右の写真は、バランスの悪い夫婦です。
花崗岩体の上部に石英脈に富んだ場所があり、細かい水晶がたくさん割れ目に見られます。この中には双晶が比較的多く含まれます。
理由は不明ですが、ここのものは、ことごとく両者のバランスが悪く、シオマネキのようです。
双晶核においては、両方の関係は等価なはずなのですが、なぜこうなるのかはよくわかりません。ケイ酸分の供給の偏りではなさそうです。
夫婦関係も、このような例がしばしば見られ、恐妻と気弱な夫みたいな組み合わせでいろいろな問題が出現します*2
なお、この産地では二つに分かれてしまう双晶も多いです。
二つに分離してしまったものの接合部をじっくり眺めると*3、もとが双晶であったか否かがわかります。
ここの双晶は、バランスは悪くても互いに譲り合いながら成長しているので、接合部はちょうど二つの結晶の谷間から真下方向に、何本もの筋を伴ってやや平滑な接合部が確認できます*4
この標本がバランスが悪いながらも分かれないのは、お互い譲り合っているためなのでしょう。
お互い譲り合い、相手を思いやる気持ちが大事です。
離婚は最後の手段です。一度離れたら、もう二度ともとには戻りません。


下の例はさらに極端な例です。
片方の結晶は平行連晶を形成しながら、もう片方を完全に組み敷いているではありませんか!
角度的には直角に接合しているように見えるため、「これが Friedel's rectangular twin *5 か!」と色めき立ったのですが、そうではなく、ただの日本式双晶が平行連晶のために角度が揺らいでいるもののようです。
恐妻の尻に敷かれた夫なのでしょう。
「ダメ亭主を馬鹿にするのは簡単だが、自分も鏡をよく見て、このような亭主にしてしまったことを反省するなら、世の中はもっともっと住みやすくなるだろう」と、知人が裳華房ポピュラーサイエンスシリーズに書いていました*6
まったくそのとおりです。



次は、成長後に晶洞壁から剥がれ落ちて再成長しているため、ほぼ完全な結晶面で囲まれています。
粘土の中に浮いている両錐の水晶に混じって出てきました。
たまにいますよね。浮いている夫婦って。
でも、仲が良ければいいじゃありませんか。
たとえ荒海に放り出されても、二人が結束していれば大丈夫ということでしょう。
典型的な平板の晶癖を示しませんが、角度的にはきちんと接合しています。



下は、有名な産地のものです。見てすぐわかりますね。
透明で、ギラギラの光沢が、乙女のプライドを感じさせます。
ちょっとバランスが悪く、小さいですけど。
ある HP の「乙女殺し」の記述には笑わせてもらいましたが、やっぱり艶っぽい乙女ってのはいいですねえ。
「嫁にするなら乙女に限る」なんて考えは男のわがまま以外の何ものでもありません。



最後は、夏に写真でお見せしたもののクリーニング後です。
やっぱり夫婦は「ハート」が大事ということで。
他の結晶が前に立っており、いい角度で写真が撮れませんでしたが、夫婦和合はすぐに邪魔が入り、そうそう人にお見せするものではない、ということなのでしょう。



水晶の夫婦は、きちんと接合していないと夫婦とは見なされません。
皆様も、ぜひ夫婦仲良く暮らしてください。
この間も友人と話していましたが「夫婦喧嘩とかけて外れた障子と説く」という落語 *7は、それなりに間違っていないです。
「じゃあお前のところはどうなのよ」という質問にはお答えできません。


ちょっと下ネタ色の強いエントリーになりましたが、まあそういうことです。

*1:今日の写真の水晶を産出したのは、すべて自分が開けたガマで、すべてのガマで普通の形をした双晶を伴っています。ですのでたまたま偶然くっついた双晶もどきとは違います。

*2:よく「かかあ天下」とという言葉を聞きますが、本場のかかあ天下は意味合いが違います。細かいことは大部分カミさんが処理するので、カミさんの発言力が強いのは確かなんですが、ここ一発という大きな仕事は、ダンナにその役目が回ってきます。だから、ダンナはなんだかんだ言っても頼りになる存在なのです。「恐妻」と「かかあ天下」を一緒にしてはいけません。

*3:「夫婦水晶の接合部をじっくり眺める」っていう表現は・・・。

*4:でも、確認できるのは、分かれてしまった後だけなんですよね orz

*5:直角の角度で接触双晶を形成する石英の双晶

*6:タイトルとは全く関係ない話をそこまで展開できるところにその人のすごさが光ります。

*7:そのこころは、「どちらもはめればすぐ直る」。