再結晶

再結晶の指導を乞われ、窮しました。
こればっかりは、そう簡単に身に付くものではないからです。


再結晶には、王道も、万能の手法もありません。


溶媒の選択、濃度、温度、時間、種付けの有無、手法、すべて試料次第です。
このことに気づくまでに、早い人でも1年かかります。
遅い人だと、3年経ってもわからないでしょう。


それでも、試してみる価値のあるセットパターンというものはあります。
これもまた化合物次第ですが。
慣れてくると、官能基や分子量、分子構造(分子歪、剛直さ、対称心の有無など)で、セットパターンがいくつも選択できるようになります。
それがわかるようになると、「時間」+「核形成」がもっとも重要な因子だということに気づくでしょう。
そして、他人の手法を盗み、自分なりのセットパターンを編み出して、再結晶の腕が上達するのです。
すると、結晶化というのが、いかに不思議なものかがようやく見え始めてきます。


だからこそ、成長した結晶を美しく感じ、愛着を持つことができるんですよ。


で、そんな話をしても具体性に欠け、参考にならないので、いくつか「オレならこうするね」という指導になります。
「なんでなんですか?」って聞かれても困っちゃうんです。
経験から来るものです*1


結局、この再結晶は私の指示どおりにしたところ、満足の行く結果が得られ、私のメンツが保たれたわけです*2

*1:もちろん、官能基とか、溶解度とか、誘電率のような初歩的な話はしますよ。

*2:新規化合物で、しかも私が合成したわけじゃないので、指示しづらいです。自分がちょっとでもそれを扱えば、勘も働くんですけどね。