命を懸けるようなものか
昔の化学者は、ずいぶん実験で大怪我しているということを知る。
Gay-Lussac は数回の爆発事故の怪我にたいへん苦しめられ、最終的に大きな爆発事故で亡くなった。
Dulong は塩化窒素の発見と同時に、片目と3指を失った。
Bunsen も爆発事故で失明し、慢性水銀中毒で苦しめられている。
水銀中毒では Stock もだいぶやられたようだ。
ジアゾメタンの発見は、中毒の歴史でもある。
X線や放射線の犠牲者は、M. Curie を初め、枚挙に暇がない。
回折実験用X線の光軸調整で指を失った人も、ちょっと前まではずいぶんいたらしい。
化学のデータの出るスピードに比べ、生理作用に関する知見は著しく蓄積が遅いのが原因。
実験に命をかけてはいけない。
未知の化合物のハンドリングや、初めてする実験をいかに安全に行えるか、潜在的な危険性を正確に予想して正しく回避できるか。
この命題は、実験化学者なら常に念頭に置かねばならない。