職人さんが嫌がる注文
かなり製作の難しいガラス器具を一つ紹介します。
これはどの理化学ガラス職人さんも製作を嫌がるでしょうね。
腕に自信の無い人は断るかも。
液体試料を窒素ガス気流に乗せて真空に放り込む、気化ヘッドです。
ガラス容器にテフロンコックがついて、これがガスの通る毛細管に T 字で接続されて、かつその全体が保温ジャケットで覆われています。
毛細管は過熱で穴が塞がりやすいので、細工が難しいのです。
それが難しい縦封入二重管で接続され、しかも加熱を嫌うテフロン真空コックの真下に付き、とどめはジャケットのループです。
一見、複雑な構造を持つガラス器具でも、ガラス旋盤を用いて細工すれば、実はそれほど難易度が高くないものが多いです。ビーカーから作った容器はこのタイプです。
ところが、ここに示した器具は、すべて手のバーナーワークによらなければなりません。回転対称ではありませんし、複雑すぎるためです。
職人さん泣かせのガラス器具です。
これを作らせれば、職人さんの腕がたちどころにわかるでしょうが、請求額も5万以上になるのは確実。
ちなみに、この細工は、今は引退した腕っこきの職人の作です。
かなりレベルが高いです。
ループの丸みを見てもらえればわかるかと思います*1。
こんなに手間のかかる、技術の必要なガラス器具でも、学生さんが落とせば簡単に割れます。
ガラスは割れるものです。だからいいのです。
でも、大事に使えば長持ちします。
で、割っちゃだめ、割っちゃだめって言うとですね、
授業料払ってるんだから、器具割って何が悪い!
って逆ギレする人がたまにいるらしいです。
オレがそう言われたわけじゃないんですけど*2。
そういう人には、(有)桐山製作所*3のガラス細工研修に、行ってもらいたいと思ったりします。
3日といわず、一月ぐらい行って来て欲しいです。