研究者の憂鬱と苦悩

んにゃー。いそがし。


と思ったら、明日(日付では今日)はボウリング+飲み会じゃんか。
実験やらせろよー。


今日の反応は完璧に定量的で、とても気分良かった*1


反応が希望通りの方向に、定量的に進むとすごく気が晴れる。
量が多くて、結晶性が高くて*2しかも色なんかついちゃったりするともう最高。
やって気分のいい反応と、疲れる反応がある。これは確か。
反応が予想通りに進行しなかったり*3とか、副生成物となかなか分離できないとか、液クロで林みたいな混合物の中から収率10%以下の生成物を取り出すとかの反応は、知らぬ間に精神的に重圧がかかる。
やった実験がことごとくうまくいかないと、精神的にへこむ*4


昔はよくジベンジリデンアセトンを息抜きで合成した。
この化合物、配位子でよく用いられるが、すごく簡単にできる。
アルコール性のベンズアルデヒド溶液とアセトンをアルカリで縮合するだけで、黄色い結晶がすごく高い収率で生成する。
作ろうと思えば、1kgでも。
で、この化合物はゆっくり結晶化させると、5cmぐらいある美しい結晶ができる。楽しい。
という感じで、そんなに必要がない*5この化合物をストレス解消に作ったりしていた*6


オレは音楽と鉱物採集が息抜き。
楽譜とにらめっこしたり、集中してコピーしたり、運指を考えながら音に集中するのが好き。頭の中が真っ白になる。
鉱物採集は、自然との取っ組み合いになるが、これもまた楽しい。
ビシッとガマを開けて、鉱物がバラバラ出てくるのに狂喜乱舞しながら、軍手で粘土に汚れた結晶面を拭う。すると透明でつやつやな水晶が採れる。最高。


修士の学生だった頃は、実験ばかりで家には風呂にしか帰らなかったような感じだった。
反応を仕掛けて反応時間中に仮眠し、起きたら反応の後処理と精製をしてスペクトルを取る。これを次の反応に使い、反応時間中にまた仮眠。
これの繰り返しを月曜から土曜までしていた。
日曜日には電車に乗って彼女に会いにいき、月曜日の朝、電車で戻ってきて学校に直行。
家にいる時間がほとんどなかった。
今考えると、よくまあ、あんな狂ったことをしていたなと思う。
家に帰らないでいたら、開いていたドアから猫が侵入したのか、オレの知らない間に押し入れで猫が子供を産んでたこともあった*7


そんなオレを見かねた先輩が、たまには骨休み・息抜きしろという意味なのか
「すこし骨抜きしたほうがいいぞ」
と言ってくれた。


・・・ほっ、骨抜きですか(笑)。
確かに骨抜きなんだけどさ。


そのころは実験のことだけ考えてればよかったので、ストレスを感じることも無かったが、歳を喰うとそういうわけにもいかなくなった。
研究の全体の展望、高効率化、論文化にあたりどのデータを潰していけばいいのかなどを常に自問自答しながら実験しなければならない。
泥の中に手を突っ込んでかき混ぜているような実験をしながらこれらのことを考えるようになると、焦りが出る。
それに加え、科学にぜんっぜんかんけーない、むちゃくちゃな話が多く、こいつがストレスの元かも。その話はここではおっかなくて書けないけど。
いいからオレに実験させろと、科学に集中させろと*8


だから、鉱物採集に行かせてほしいんです。お願いしますだ。

*1:仕込んだ量と同じだけ生成物が取れる、単離操作不要。このネタの詳細は年会で。

*2:高すぎて溶けないものは困るけど。

*3:超ビッグネームの某先生は、「サンプルをこぼすなどのミス以外は、反応に失敗というものはない。そこには必ず自然の法則がある」と仰っておられた。それはもちろんそうなんだけど、やっぱりぐっちゃぐっちゃの complex mixture になる場合ってあるじゃん。単離するつもりも無くなるよ。

*4:へこみ方は経験値によって異なる。行かない反応を何度も何度もやってると、打たれ強くなる。悟りの心境に近いのかも知れない。

*5:パラジウム錯体にするにしても、何十グラムも使うものではない

*6:うわ!ここまで書いて、すげー化学中毒っぽいネタだな、とちょっと反省。実験のストレスを実験で抜くってのはいかがなものかと。オレはそんなにストレスがたまるタイプじゃないし、たまりやすい仕事でもないから、それでいいのかも

*7:ホルモンの関係なのか、猫は子供を産むと蚤がいっぱいたかる。しばらく部屋の中でネコノミがぴょんぴょん跳ねていた。

*8:そんなこと言ってると、「キミは出世しないタイプだ」と言われる。百も承知だ。