で、鉱物採集という趣味が知名度が高いかっていうと、そうでもない。
最近は、様々な人のご尽力で知名度が増したが、やはり市民権を得るには至っていない。
が、やってみると、実はすごく楽しい。
宝探しの色合いが強い。
自然を削り取る趣味なので、決まりごとが守られていないと、山が荒れ、地主が怒るので、個人的にはおおっぴらに勧めていない。
が、きちんと共存できるような(最近の流行り言葉だと「持続可能な」)採集手法があるのではないかと思っている。


化学の分野の人に聞いてみると、思ったより鉱物採集人口が多くない。
全体に比べると若干多目かな、ぐらいで。
もちろん隠れマニアもいるんだろうけど。
オレとしては鉱物採集という趣味を、まず自然科学者に勧めたい。
自然科学に必須な「自然と触れ合うこと」が満喫できるのは大きい強みだ。
それに、観察力がすごく要求される趣味なので、観察眼が養われる。
結晶や種々の元素をいじる化学者にとっては、すごくプラスになるんじゃないかと。
地球化学的な元素のいったりきたりがわかるし、どの元素がどの元素と結びつくのが安定なのかが、肌で感じられる。
結晶の形状、色、素性に対するセンスが研ぎ澄まされる。
屈折率、色分散、吸収スペクトル、双晶、結晶系、面指数などを思い浮かべながら結晶を扱うことができるので、再結晶や回折実験など、結晶を扱う腕が確実に向上することを保証する。


溶媒分子の有無、多形などが、結晶をルーペで見ただけでピンとくるようになる。
ホント。
オレは、この5年ぐらいで、化合物の多形現象を10以上見つけたが、すべて観察だけで確証が持てた*1


興味ある人は、オレと一緒に鉱物採集に行きましょう。
まずは繰り出しルーペを購入して、結晶をじっくりと眺めてください。
話はそれからです。

*1:逆に、それでがっくりさせることもある。人の実験を横目で見て、菱形の結晶(モノクリなんだが)がバラバラ再結晶で落ちているのを見て「あ、それメチルの六員環」と言って怒られることも。で、NMR でオレの観察が間違っていなかったことを知るわけだ。嫌な話。