firestone bubbler

「大事に使うなら、持っていってもよい」という条件で、ある人から firestone bubbler *1をもらった。
これはおそらく国内で作られたホントに初期のプロトタイプで、製作者は神業職人の A 氏。
マジ?!くれるの?
これ、ムチャクチャ欲しかったんだよね。

すごい細工技術。上の真空コックは手吹き。下の三方と二方のコック以外すべて手作り*2
二重管の曲線の滑らかさとか、職人芸としか言いようがない。
東京のある砂時計屋さんも二重管がかなりうまかったが、A さんのほうが上。
硝子旋盤なのかそうでないのかが気になる。
そうでなかったら、ネ申。


二重管の外側をツーっと縦に愛撫する。
女のウエストから腰にかけてのラインみたいに、出っ張りもくぼみも無い滑らかな曲線の感触が美器具の証。
オレ的には、以下の写真の二重管接合部↓が

女のウエストライン↓と等価に映る(女の裸の写真なので、興味ない人や18歳以下の人は見ない方がいい)。
http://f.hatena.ne.jp/doublet/20060217050417
病気ですかそうですか。


この種のバブラーの歴史は浅く、30年ほどしかない。
それ以前はストックの水銀コックか、水銀全柱マノメータだった。
オレも前職では水銀柱を使っていた。
真空引きしたガラス装置を150気圧のアルゴンボンベで戻すときに必要な器具。
微差圧計でもいいんだろうけど、どうも危ないし、面倒なので。


以前の日記で写真を出したのは、現行タイプ。
報告書の図面ではこんな感じになっている。


この図面のものは、Aldrich で売られている(メーカーは Ace Glassware)ものによく似ている。

使用法は Ace 社の pdf が詳しい。
http://www.aceglass.com/manuals/8766/1.pdf
でもね、正直言って、Ace 社のものは量産品なんだよね。その割に高いし。

色っぽさが足らないんだよな。こんなもんに欲情できるかっつーの。
「美しいガラス器具は、丈夫で機能的だ」という法則があるので、オレとしては Ace のものは使いたくない。
日本国内にうまい職人さんがいっぱいいればいいんだけど、国は職人に冷たいし。


一般的でないガラス器具なので、これを使う人は全化学者の中でもほんのわずかだろう。
しかもこの器具の歴史や価値について評価ができるとなると、ものすごく限られるのは当然。
だから、オレのところに来るべきして来たガラス器具といえる。


一生大事に使おう。

*1:http://d.hatena.ne.jp/doublet/20050927#p1 を参照のこと。

*2:真空コックに関しては、このころは真空ズリできる業者が限られていたので、真空摺り合わせ専門のガラス屋があったらしい。今はどうなんだろうか。「グリスを塗らずにコックを胴に入れて回してはいけない」なんて常識も最近は聞かなくなった。