やっぱり朝から実験指導。
今日のテーマは、蒸留。
蒸留カラムが最も分留効果が高くなるときは、どういう状態なのか。
沸点に応じて、どういう器具を選んだらいいのか。
真空の制御、空気酸化を防ぐにはどのような手法をとったらいいのか、などなど。
クーゲル、ト字管、k字管(クライゼン)、ゼーベル、固体蒸留、一滴蒸留、ミクロ蒸留、ビグリューカラム、ウィドマーなど。
すぐそばに使えるスピニングバンドがないのが残念。
ヤツがあると還流比について説明するのが楽なのだが。


ついでに液クロについて。
六方インジェクターの原理。
これがわからないとレオダインのバルブが使えないし。


まだまだ学生は考えながら実験する習慣が付いてない。
加水分解反応に脱水溶媒は不要だろう。
「んなもんは缶出しで充分」といっても、どうも抵抗があるらしい。
オレは缶出しTHFをそのままケチルで真っ青にしてるぞ。
そのぐらい最近の溶媒は純度が高いのだ。
ナトリウムワイヤーなんて、大昔の溶媒の話だぞ。
ついでに言ってしまうと、ろ紙も最近はすごく丈夫になった。


学部四年生が必死で実験室を整備している。
アルゴンのラインを張り、水道にブラシ掛けをつけたり、ヒートガンやスターラーを直したり、エバポレーターを組み立てている。
自分で立ち上げれば愛着がわくし、機構が理解できる。
一人は実験室に勉強机を作った。
なんでも「ここが落ち着いて勉強できる」んだそうだ。
そうなのか?


質量分析をしようと予約ノートに名前を書きに行く。
が、ただいま測定中。
「すぐ終わります」というので待っていても、順番が回ってこない。
2時間たって、夜の11時になった。
おかしいなと思って見に行くと、すでに彼は終わっていて、しかもオレより後に予約した学生が先に測定してるし。


このやろう。おもてにでろ。


そっちがそのつもりなら、オレにも考えがある。


とまあ腹を立てるのも大人気ないので、一応断って測定。
中国人ぽすどくの合成サンプルの質量分析
分子量が1000ちょっとだが、ちゃんと親イオンが電子衝撃で出てきた。
よかった。
学生さんに頼まれたサンプルは何ができてるのかよくわからん。


中国人が「お前は誰にマスの測り方を教わったんだ(英語)」と聞いてきた。


オレ「オレは二十歳の時からずっとマスを測っている*1」。


中国人ぽすどく「ほんとか?二十歳でか?」


オレ「ほんとだ。それが日本の科学技術の底力だ。ただし、超おんぼろのマスだったが」


中国人ぽすどく「すげえ」


オレはウソはついてないぞ。

*1:正確に言えば19歳なのだが。あのころは朝から晩までずっとマス漬けだった。あのときオレと苦楽を共にしたマスも今は無くなった。