ヨウ素

カメラを久しぶりに出した(引っ越しで行方不明になったスマートメディアを見つけた)ので、写真を撮ってみた。
写真はヨウ素単体。結晶系は斜方晶系。空間群 Cmca(#64)。



面指数がよくわからない。左の結晶の向かって左の菱形の面は、(100) だろう。錐面はけっこう高次の指数だと思う。
a = 7.14, b = 4.69, c = 9.78 にうまく合う指数が思い浮かばない。
8面の錐面は等価。
ファンデルワールス力から考えて、錐面と分子の I–I 結合が平行に並んでいるんだろう。


ヨウ素は放射性同位元素のアスタチンを除けば、一番高周期のハロゲン元素で、きれいな鋼灰色の結晶*1になる。
蒸気圧が高くて、室温でも紫色のガスの衣をまとっている。
くさい。
ビンに入れて放置すると、容器上部にいっぱいきれいな結晶が昇華する。
写真を撮ろうとまごまごしていると、少しずつ蒸発して、角が丸くなる。
精製法はやはり昇華。
大量に昇華精製すると針状結晶がいっぱい育つ。


結晶構造は、ヨウ素分子が互い違いに配列し、矢筈型のような(ちょっと違うけど)充填をする。
元素で斜方晶というのは意外と少ない。普通はもっと対称が高くなる。


地下資源としては珍しいことに、国内生産が需要量を上回り、輸出までしている。
生産地は千葉。ヨウ素を大量に含んだ鹹水が井戸から出る。
そのため、千葉大理学部および工学部はヨウ素の研究が抜きんでている。
工学部にはヨウ素利用研究会という会もあり、シンポジウムを開催している。


どちらかというと、オレはあまり好きな元素ではない。
ヨウ化物は光や熱にあまり安定でなく、すぐ分解しちゃうから。
ちょっと空気が入ると、化合物が遊離したヨウ素ですぐ紫色になっちゃう。
ヨウ化水素も使いづらい。酸化されやすいのですぐヨウ素がでちゃう。
ハロゲンでは、フッ素に次いで使いづらい。
個人的なハロゲンの好みは、1臭素、2塩素、3フッ素、4ヨウ素の順だ。
フッ素は自分では単体を扱うことができないが、おもろい反応性を示す。
ハロゲンのくせにすごく小さく、よく動き回る。しかもえらく電気陰性度が高い。
ツボをついた反応をやらせると、フッ素というのはむちゃくちゃ楽しい。
山椒は小粒でぴりりと辛い。
臭素は優等生。選択性が高く、液体なので扱いやすい。反応性も高い。
塩素は並。塩素ボンベを使うのはめんどくさいが、とにかく安く、軽いので塩化物の蒸留も楽。
臭素みたいにメチル基と disorder を起こしづらいし。
というわけで、ヨウ素は反応ではあまり普段使いしない。
TLC を染めるぐらい。

*1:ヨウ素は屈折率が長軸方向では 3.3 もあるので、全反射を起こす。その点では金属と同じ。低温でできる臭素の赤い結晶とは様子が違う。