黄銅鉱を踏みしめて歩く

ある産地に行ってみます。
ここは、知る人ぞ知る大きな珪化帯で、山で小さな水晶がよく見つかります。
ここの珪化帯がどのくらいの範囲があるのかをうろうろ調べるのが目的です。
が、露出が悪くてなかなかはっきりしません。
転石には水晶が多数付いています。
しばらく探すと、氷長石と水晶が付いている岩を見つけました。
氷長石は2cmほどもあり、わりと立派です。
喜んで割り出して持ち帰ります。
沢を何とかよじ登ります。
藪があまりにも凶悪なのでさっさか退散したほうがよさそうです。

体中傷だらけになって藪を漕ぎます。
秋口にまた来てみましょう。


ちょっと離れたところに蕎麦屋がありました。
この蕎麦屋は当たりでした。大変おいしい。


鉱山跡を探してみたかったのですが、工事中で沢が上がれません。


古い古い鉱山跡が少し先にあったらしいので、そちらに向かいます。
すると、ちょうど沢の護岸工事で鉱山のズリを切っている最中でした。

しかし、ここの鉱石は黄鉄鉱が強いために古いズリ石は真っ赤で、見た目からは鉱石なのかよくわかりません。
端から割り出す気力もありません。
強度に酸化されていて、元の鉱物がよくわからないヌケガラが多いです。黄鉄鉱かな?
ここにも米水晶があります。緑泥石を含んで緑色の水晶もありました。
お土産に一つ、小さなものを拾います。


すぐそばに砕石場があります。盆休みで操業していないと思ったのですが、管理人がいるので挨拶すると気前よく入らせてくれました。
しばらく露頭を眺めて、びっくりしました。
現場の上部に立派な銅鉱脈が出ています!
脈は膨縮がありますが、最大太さ20cm、多量の黄銅鉱と黄鉄鉱を含み、少量の斑銅鉱と閃亜鉛鉱を伴います。脈石は石英と緑泥石と粘土です。
平均脈幅は5−10cmぐらいでしょうか。似たような脈が3つあります。
黄銅鉱の脈がきれいな金色です。まったくといっていいほど酸化されていません*1
この規模の鉱脈は金属鉱床としては雑魚ですが、それでも露天掘で新鮮な鉱石鉱物の産状が確認できるのはラッキーです。
脈をよく見てみると、この鉱脈は先ほどの鉱山が押した鉱脈の延長ではなく、平行脈のようです。
この脈は脈幅品位で銅数パーセントあるでしょう。質はすこぶるいいです。
量が取れれば売鉱してもいいんじゃないかと。
しかも、晶洞がよく開きます。ここには8面体、12面体黄鉄鉱と一緒に水晶が育ち、黄銅鉱のきれいな結晶ができています。耳付き双晶も。
水晶の上に方解石の釘頭状結晶が乗っているものも。
この鉱脈部分は砕石では邪魔者なので、崩されて荒く砕かれ現場の敷石になっています。



(↑右側の石の手前のくぼみは晶洞です、やや鈍い光沢の黄銅鉱結晶がいくつも付いてます。)


きれいな黄銅鉱の結晶がブルのキャタピラで潰され、金色の絨毯。


も っ た い な い お ば け が で る ぞ。


しかも誰もハンマーを当てた跡がありません。鉱物採集の人は来てないのでしょう。
ずっしりとした感触も嬉しい、握りこぶし大のムクの黄銅鉱の塊がいくつも落ちています。
ガマから転げ落ちた2-3 cmの三角形の結晶も多数見られます。

(↑こんなのです。黄銅鉱はアメーバみたいな結晶になりやすいですが、面はわりときれいで、細かい面が多いです。)


黄鉄鉱もきれいなのがあります。水晶の間に1 cm 前後の八面体結晶がコロンとくっついて、標本として見栄えがよさそう。


しかし黄鉄鉱なんてのはザコです。
黄鉄鉱なんて金属鉱脈では飾りです。偉い人にはそれがわからんのです


しばらく叩いてわかりましたが、黄銅鉱の結晶がきちんと鎮座したゲス板を採集するのはそれほど簡単ではありません。
鉱塊はでかいし、強く珪化を受けていてかなり硬いので、岩に強くハンマーを当てると脆い黄銅鉱の結晶は根元から吹っ飛んでしまいます。
しかも母岩が狙った方向に割れてくれません。脈に対して垂直に割れやすいのです。
それでも、なんとか水晶のトッコにちょこんと立った黄銅鉱の新鮮な結晶標本が採集できました。
我を忘れて採集したらどっぷり日が暮れました。車に戻ったのは7時半でした。

*1:黄銅鉱は酸化に弱く、数年も湿気のあるところに置いておくとすぐに分解してしまいます。ほとんどの金属鉱山が操業をやめてしまった今ではなかなか新鮮な黄銅鉱の結晶にめぐり合うのは難しいのです。方解石に埋まったものを酸で溶かし出すぐらいです。