きれいな結晶

写真はある gem-ジオール。蒸気圧が比較的高くて、ゆっくりゆっくり昇華してくれます。
構造は想像にお任せしますが*1、蒸気圧が高いジェミナルのジオールだということで、分子量がかなり小さい(150ありません)ことがおわかりいただけることでしょう。

溶液から結晶化させると針状の結晶(単斜晶)が析出しますが、気相からだとこういったコロッとした結晶(三斜晶)が昇華します。
両者は、結晶構造における水素結合の様式が違います。
溶液からですと、溶液と結晶表面との相互作用が結晶構造に反映されますが、気相ではそういうのはありませんので、多形になるようです。
小さな結晶で、直径0.5ミリ内外ですが、結晶面がキラキラ光ってとてもきれいです。
結晶屋が認める「きれいな」結晶ってのはこんなのです。
これなら「おっしゃ!回折実験するぞ」って気になります。
さて、私はどの結晶を選んで回折計に乗せたでしょうか?
ちなみに中ほど右側の細長い結晶が0.6ミリ長ぐらいです。


水からの伝言に掲載された写真は、確かに氷が六回軸を有することを示す資料にはなりますが、私が「きれいだ」と思うものはありませんでした。
きれいかどうかってのは個人的な主観であって、科学的な評価でないというのは当たり前ですよね。


それにしても糸くず、あっちいけ!
何で撮影の際に気づかないんでしょう。謎。


もうひとつはこれです。
結晶化の際に容器を軽くゆすったら、結晶がみんなくっついてしまいました。
それでも、結晶の素性はよいです。これも三斜晶です。

これはくっつきあっている結晶の大きいもので、2ミリ程度あります。
回折実験をするには大きすぎるので、切りました*2
この化合物は、次の春季年会で発表すると思います。
某大の最近合成した化合物と極めて類似した構造を取っています。いじめないでね。

*1:多分今年度中にこの結晶構造の論文を書き上げることでしょう。予定は未定ですが。

*2:正確には割ると言ったほうが正しい