雷の子供

写真は内部で絶縁破壊されたアクリル板です。
撮影条件は EL-Nikkor 63mm F2.8 を、f = 16 に絞ってます。1/1.6 sec. で、接写リング使用。ボケてるんであとで撮りなおします。

アクリル(PMMA)の板に電荷をかけても、アクリルは絶縁体ですから表面がわずかに帯電するだけで、電子は内部まで入っていきません。
無理矢理押し込む場合、電子銃を使って電子を加速して叩き入れると、その運動エネルギー(数MeV の単位です)に応じて電子がいやいやアクリル板内に飛び込んでいきます。
電子はある深さまでアクリルに入ると、その運動エネルギーを完全に失って、マイナスの電荷をアクリル分子*1に与え、そこにイオン中心ができます。
そんな感じで電子をがんがんアクリル板に打ち込むと、内部がかなりマイナス電荷を帯びたアクリル板ができます。
これを刺激を与えないようにそっと取り出し、アースの付いた鉄釘をアクリル板にハンマーで打ち込むと、一瞬の閃光と共にアクリル板内にたまっていた電荷が鉄釘側に流れ、絶縁破壊されます。
その模様がこれです。
プチ雷です。
きれいなんですよこれ。写真の範囲は2cmぐらいなのですが、羽毛みたいにものすごく細かいフラクタルな絶縁破壊の跡があって。


負の電荷のみを物質が内部で帯びる*2というのが、エネルギー的にいかに不安定で、不自然な現象であるかがわかるかと思います。
そう、マイナスイオンの話です。
学生さんから「マイナスイオン扇風機を買った」というメールが来ましたが、工学系ならマイナスイオンはやめなさい。
小さなメーカー*3さんも煽らないでください。もうその虚偽広告は捨ててください。
電気石粉末を絶縁体の塗料にちょびっと混ぜ込んだだけで、負電荷が出てくるはずないです。
「非マイナスイオン扇風機」という名前で、マイナスイオンが出るはずもなければ、人体にたまるはずもなく、何かに効くはずもないことが注意書きで書かれている扇風機があったら、私も喜んで買いに行くのですけどね。


(追記)人体表面でも高電圧なら起こりえるそうです

これが帯電した人の結末です。それでもあなたはマイナスイオンを信じますか?

*1:たぶん PMMA のカルボキシル酸素

*2:表面帯電というのもありますが、アースに触れば放電しますよね。人体は導体に近いですから。

*3:大手はマイナスイオンの売り文句をだいぶやめました。あたりまえ。