「水からの伝言」の写真

久しぶりに江本節をコンビニで斜めに読んだのですが、まあ内容は「こじつけにもほどがある」、というネタですので略。
最近、私は写真ばかり撮っているので写真の出来を見てしまいます。
この本の写真、お世辞にも巧いとは言えませんよね。
たぶん、ニコンオリンパスの三眼 CCD カメラ付き顕微鏡システムを低温室に持ち込んでいるのだと思うのですが、ピントを合わせる位置にも一貫性がありませんし、そもそも開口絞りをいじってないな、と。
おそらく、光学系は無限補正光学系で、倍率は5−10倍程度です。光源は落射ですね。
この写真集のアマゾンのレビューが「きれいな結晶の写真集」って評価をしている人が多いのですが、それは、本当にきれいな雪の結晶の写真を見たことが無いからでしょう。
私はまだ接写を初めて半年の駆け出しですが、私が見てもアラがわかります。
やっぱり結晶の写真はね、輝く結晶面と冷徹に澄み切った質感、定規で引いたようなシャープなエッジが本質ですよ。ぜんぜん出てませんもの。
きれいな結晶の写真を見たい人は、Mineralogical Records を購読してください。
よっぽどきれいですよ。
私の写真を見て「お前もうまくねーぞ」というツッコミは歓迎します。が、私は修行中の身ですから。


なお、気相成長した氷の写真は、市販の安価なコンパクトデジカメでもこのぐらいは撮れます。2年前に撮ったものです。

この写真には、結晶の成長の癖が違う部分が混じっています。
左上は六角板状の平行連晶ですし、他の部分は樹枝状です。
同じバッチの成長でも、1cm位置がずれると、形が変わってしまうのです。
氷の結晶は、温度、水蒸気分圧に応じて成長速度が変化し、ころころ晶癖が変わります。
結晶の奥まった部分は、他の部分の結晶成長により水蒸気分圧が下がりますので、成長条件は微妙に変わるのです。中谷宇吉郎が指摘したとおりです。
同じようなわずかな条件の差により、江本グループの低温室でも、同一の水からでもさまざまな晶癖の氷の結晶ができるでしょう。
完全に六回対称なのもあるでしょうし、基盤と結晶軸のなす偶然の角度により、対称成長が阻害されているのも多くあるでしょう。
それらのうち、都合の良いように結晶を選んで写真を撮っていると私は考えています。