2ちゃん

2ちゃんねるマクロレンズスレッドを読んでました。
面白いかも。一部異常にマニアな人が混じってますね。


で、なんか「マクロレンズ」の定義がわかっていない人が多いので、ここに書いておきます。
マクロレンズとは、近距離の物体を撮影するために設計された有限距離複写光学系のことです。
基本的に、非マクロレンズ無限遠、つまり平行光線を相手にした設計をします。
近距離の物体に対する補正を行ったレンズも多いのですが、設計の重点は無限遠にあります。
マクロレンズは違います。ある有限(1m以内が多い)の距離に置かれた被写体を撮影するのに最適な設計をするのです。
こちらの方が設計が難しくなり、計算量も増えます。
また、マクロレンズには「設計基準倍率」というパラメータがあります。
基準倍率で最も良好な収差補正状況になるように、設計がなされます。
物体から像面までの距離(共役長)とレンズの焦点距離によって撮影倍率が決まるのですが、この設計倍率に撮影倍率が近いほど、良好な像が得られます。
マクロレンズは基準倍率が(非マクロレンズに比べ)大きい特徴があります。
マクロレンズでは0に近くなります。普通よく言われる「マクロレンズ」では、1弱ぐらいでしょう。


この区分では、エルニッコールマクロレンズ(基準倍率は8−2倍)になり、シグマやタムロンなどの「なんちゃってマクロ」はマクロレンズにはなりません。


Printing Nikkor 105mm F2.8A を例に取りますと、焦点距離 104.5mm、平行光線に対する F 値が 2.8-11 まで、設計倍率は1倍(等倍リレーレンズ)、共役長(物像間距離) 388.1mmです。
これはもともと映画のフィルムの光学コピー用レンズですので、可視領域の光3色に対して色消し(アポクロマート)になっています。
そして、様々な収差に関して、基準倍率で良好な補正がされています。
基準倍率のみの結像には異常にスペックが高いのですが、それ以外の撮影倍率にはまったく気を使っていません。
オールマイティレンズは、性能が下がるのです。
性能を上げようとすると、凝った光学系にしなければなりません。
欲張らなければ、3群3枚でも充分な像を結ぶんですよね。
よい例は Luminar 63mm, 40mm です。あれは単なる3枚玉で、残存の倍率色収差はあるのですが、使用倍率では極めてシャープな像を結びます。
もっとも設計が特化しているのはツァイス S-Planar のマイクロリソグラフィー用なのですが、絞りなし、収差補正は単色光のみ、完全に基準倍率のみの使用条件になってます。
ここまですると、レンズの解像が光の波長近くまでになります。
しかし、使いづらいことこの上ないです。
およそスペックを追求したマクロレンズは、とにかく使いづらいモノなのです。


また、二次的な定義として、「Dr. K が集めるレンズこそが真のマクロレンズだ!」としてきましたが、最近彼は可視領域以外の電磁波の結像光学系に注力しているので、この定義は古くなってしまいました。