超精密マシンに挑む

超精密マシンに挑む―ステッパー開発物語

超精密マシンに挑む―ステッパー開発物語

吉田庄一郎(現ニコン相談役)が半生をかけたステッパー開発の話。
彼の情熱が伝わってくる良書。


ステッパーとは、半導体の中枢をなすシリコンウェハ基板上に、光で回路パターンを描画する装置です。
人類が作り出したもののうち、最も精密精巧な道具。
ステッパー技術がニコンのドル箱になるまでの努力と苦悩を描いたのがこの本です。
ものづくりとはどういうことか、技術を高めるということの苦労を読み取ることができます。


ステッパーは、フォトマスク(レチクル)と呼ばれる石英ガラス基板にクロムで書かれたパターンを光学系で複写し、これを金属ケイ素表面上に塗られた感光材料に焼き付けて現像するというプロセスの中心になります。
こう書くと「なんだ、簡単じゃないか。写真と同じだろ」と思えるのですが、精度が違います。
数十ナノメートルの単位の繰り返し精度ですから。
これを、何層も何層も重ねていきます。
公差 40nm 、これは、東京から富士山山頂のテニスボールを打ち抜くのと同じ精度なのだそうです。
しかもこれをダイナミックに制御していきます。
早く動かせば動かすほど、歩留まりが上がるのは当然です。その速度秒速2メートル。


この技術を完成させるには

  1. 極超高解像力で無歪のレンズ
  2. 高速に動かせる超精密2軸ステージ
  3. きっちりと位置決めしてフィードバック制御できる座標測定機


が不可欠です。レンズって言ったらウルトラマイクロニッコールしかないです。
他にも単色光技術やら様々あるんですが、これはそれほど解決が困難な技術ではありません。
これらを何とか解決し、多方面の技術屋の垣根を取っ払って製品を組み上げるという苦労。
これは、古い日本の職人芸的な技術屋スタイルではかなり難しいのです。
自分の技術をどんどん掘り下げて「タコツボ」に入り込もうとする技術屋を引っ張り出し、いかに適材適所で開発プロジェクトを組むか。
開発にとってはこれが要なんですが、この苦労話が面白いのです。


ニコンエンスーは読むべし。


ニコンは技術屋集団で商売が下手なんだな、たぶん。