重合による sp3 炭素形成反応

しばらく本業で、四塩化ケイ素を強還元剤で還元して、ケイ素のナノメートルサイズのクラスターを作って、このものの自動酸化でナノメートルサイズのシリカ微粒子を作っています。
四塩化ケイ素の還元によるシリコンナノクラスターはすでに報告があります。Zintl 相という金属間化合物の電荷を戻してやればよいのです。しかし、その先はほとんど報告がありません。
で、先月、四塩化ケイ素と四塩化炭素を間違えた(正確には、出入りの業者さんが間違えて持ってきた)のに気づかず、四塩化炭素を脱水トリエチルアミン中でマグネシウムアントラセニドで還元してしまい、困ったことがありました。
「金属のアセチリドができて爆発しそうで危ないから、ドラフトでほっとこ」と放置して、一月ぐらい忘れていたのです。
今日見たら、なんか細かいキラキラした無色透明な3ミリぐらいの硬い結晶粒がいっぱいできて沈殿していました。
塩化マグネシウムだよなあ?と思って水で洗って廃液に捨てようとしたんですが、さっぱり水に溶けません。えらく硬いの。
塩化マグネシウムは基本的には歪んだサイコロ状の結晶になるんですが、この結晶は正八面体ベースですし。
なんだろうこれ?


とりあえず回折実験してみようと小さな粒でX線の反射を見たら、観察どおり立方晶!です。ラウエ群 F !?


「あ、これダイアモンドじゃね?」ということになりました。
確かに結晶構造解析をしてもダイアモンド構造が見えます。
四塩化炭素を、強還元すると塩素が引き抜かれて普通は不定形の炭素(比表面積の極めて大きい活性炭)ができるんですが、ある種の溶媒と還元剤の組み合わせでは、sp3 結合で無限に連なる重合反応が起こり、ダイアモンドになるようです。
炭素高圧相が、常温常圧のウルツ型カップリングでできるってすごくないですか?
しかも簡単にミリメートル大。
金儲けの匂いがプンプンするわぁ〜。





むろん、エイプリル・フールですた。
写真はミニミニダイアモンド、アダマンタンが昇華したものです。
これもダイアモンドの分子構造を持ち、立方晶Fです。
四塩化炭素の強い還元剤や塩基による還元反応では、ジクロロカルベン(二価の炭素化学種)等価体であるカルベノイドが過渡的に発生し、これが多量化して炭素(不定形)を形成します。
アルカリ金属などでは爆発性のアセチリドを生じるので、四塩化炭素とアルカリ金属との混合は、原則的に禁忌とされている混合危険のある組み合わせですね。
テフロン撹拌子を強い還元剤の反応で使うと真っ黒になるのは、テフロン(ポリ(テトラフルオロエチレン))のフッ素が引き抜かれて炭素(比表面積の極めて大きい活性炭)ができるためです。
まあ、しかし条件次第では sp3 で無限連鎖ができたりするかもしれません。たぶん sp2 の方が多いでしょうけど。
ちょっと夢があり、「やってみないとわからないよね」という匂いを少し含ませたエイプリル・フールのワルノリなのでした。信じた人はごめんなさい。