蒸留装置

Yってメーカーにビグリューカラムの特注を出しました。
「イボイボは絶対並べるなよ」「なるべく多く、ランダムにイボれよ」「枝管の角度、間違えるなよ」「二股の谷間は、温度計バルブの真横だからな」「スリは絞りを絶対に入れず、スリ合わせた後に斜めカットオフだからな」などの、当たり前だけど言わないとひどい目に遭う数多くの注意点をこなし、まともなものを作って来ました。注文の多い客ですまんね。


いいだろう。いい出来だ(ゴルゴ13のノリ)。


で、「昔なら、スピルを上げるトゲを切り落としに付けるんだがなぁ」と最後に言ったら、営業のTさんが「そういうことを言うヤツは60を超えたオヤジだ。今の人はそれを知らないし、この10年、その話が出たこともない。あんたいくつよ?」と反撃に遭いました。
そうか?そうなのか?
蒸留は伝熱と分配でおよその定常状態モデルが解析できるわかりやすい化学工学なのですが、段理論から考えてもカラムから落ちて来た液滴は、なるべくカラムにもう一度押し上げてやった方がいいに決まってます。
しかし、このトゲ、作りづらいんですよね。
トゲを付けたあとにもう一度スリ合わせしなければならないので、ガラス屋の無精のためにほとんど廃れた小技なのです。


しかし、どこかで注文入れて作らせてやらなくちゃ、職人も営業も新しいユーザーも忘れてしまいます。
蒸留装置は、職人の知恵ではデザインできないのです。実際に蒸留するわけじゃないから。
N社も、ミクロ蒸留が作れればおkみたいに思っているところがあって。
オフセット管のオフセット量も、フラッディングを防ぐ加工も、みんなみんな忘れられてしまいました。
私はやかましく言います。悪い細工で仕事が捗らないのは勘弁して欲しいからです。
一番いいのはですね、古くてもいいから出来の良い見本を1本常に持っていて「全く同じの作ってきてね。手を抜いたら受け取りません」ってのです。
でも、もう二重同心円管タイプの精留塔は無理ですね。