水晶の左右

10cmくらいのガマ(晶洞)から出た水晶を無作為抽出してみます。
右水晶
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左水晶
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こんな感じで右と左が1:1で出現します。
どの面で、左右を見分けてるか、わかりますよね。
自然発生した鏡像性(キラリティー、不斉)は、完全に左右が等価の関係にあります。
片方に偏らせるのはものすごく難しいです。
有機化合物の合成反応において、「ある種の触媒をちょこっと使うと、それが偏りますよー」って示したのが、この間ノーベル化学賞を受賞した野依先生でした。


こうみると、同じ場所で、10cmも離れていないところから出ている水晶でも、面の発達比(顔つき)がけっこう違います。
成因が違うと、もっと違います。めちゃくちゃ違います。
10個出せば、「バラツキあるなー」ってわかりますけど、1個ではわかりませんよね。
で、端正に結晶が整ったものとそうでないものをおのおの一つずつ選び出し「「ありがとう」って言葉をかけるときれいな結晶が出てきました。でも「ばかやろう」って言葉をかけると、ヘンな形のが出てきましたよ」って私がここに書いたら、信じます?
つまるところ「水からの伝言」って、そういうトリックでできています。
結晶の形(晶癖)には、成長時の条件差によるバラツキが多く、一つの結晶だけ取って細かく論じても意味がないのです。
完全に自由空間での成長で、ほとんど同じ条件での多数の成長ですと、だいぶそれが揃ってきます。
これを調べると、条件に応じた晶癖の相関(結晶化条件と形状の関係)がおぼろげに見えてきます。
雪の結晶について、晶癖と条件との相関を定性的に記載したのが、雪氷学の第一人者、寺田門下生の中谷宇吉郎でした。


こじつけてポエムを書くのは自由ですが、小学校の先生はそんな本を道徳の授業の副読本に選ばないでね。
おかしなポエムよりも、世界に誇るべき先駆的な研究を地味に積み重ねた、100年残る研究をした人に光を当てましょうよ。
それにね、言葉はコミュニケーションの手段としては有効かも知れないけれど、言葉では決して伝わらない、大事なものって、いっぱいあるんです。
厳しい言葉の裏にある優しい感情、甘く聞こえの良い言葉に隠された悪意など、世の中に出ればいっぱいあるでしょう。