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知人から電話が来て、「鉱物採集に出向いたら橋の欄干に人がぶら下がって云々」って言っておりました。
意外とみんな見つけるのよね。
渓流釣りで流されちゃった人とか。
あまり気持ちのいいものではありません。
験が悪いので、そういう日は温泉行脚にする方がいいです。
自分も含め、採集で死ぬことのないようにしましょう。
この間の水晶産地も、地主さんが「事故起こすと下ろしてくるのが大変なところだから、落ちないように」って。
へーい。
オヤジがまだバリバリ現役の遭難救助活動をしていたころは、よく岩場で人が落ちました。
死んじゃえば後は物体でしかありませんので、そこそこ適当に下ろします。
そんなものです。
その頃の遭難は、冬山や岩登り(それも人工登攀)で、助けにいくのも厄介で、救助がたどり着くまでに死んでいるケースが多かったように思えます。
今は登山客の年齢がシフトし、中高年が疲労遭難するケースが多いようです。
ケータイで出前よろしく呼び出されるんだそうで。
地図も持たない人もいるんですよね。信じられないっす。自殺行為です。
この間のベストセラーで「話を聞かない男、地図が読めない女」ってのがありました。
では「読図ができる」ってどのレベルを指すのでしょう。
地図は見るものではありません。読むものです。だから「読図」といいます。
セルフナビゲーションってのは連続行為です。常に現在地がわからないとダメなのです。
街中は目印が多いので、多少ロスト(現在地がわからなくなること)してもなんとかなります。
照合可能な目標物を見つけてリセットすればいいだけですから。
しかし、山の中ではどうでしょう。
沢を遡行し、よく似た大小の枝沢が何本も何本も合流しているわかりづらい地形で、現在地が正確につかめますか?
深い霧の中、雪が積もって道のわかりづらいのっぺりとした県境の尾根部を歩き、地図通りのルートが踏めますか?
読図とは、そこまで要求されます。後者は難易度高いっす。
適当に省略された地形図のコンターのヒダから地形を予測し、自分の移動速度と移動時間から移動量を読み、方位、展望、目標物、ありとあらゆる情報を拾い、判断し、これをもって現在地を確定します。
現在地がわかるから、先に進めるのです。
読める人は、地形のリニアメントまで読み、地質の変化も想像するでしょう。
道のない山に入るには、それなりの読図の能力がいります。特に深い山は。
しかし、地図がなければ話が始まりません。
だから、地図を持たずに初めての山に入る人は、「チョーありえねー」って思いますね。
私ももちろん現在地を読み間違えることがあります。この間は雷雨の中で派手にロストしましたし。
ですので自分でも「完璧に読図ができる」とは口が裂けても言いません。
これ、本当に難しいのです。
しかし、ハンディGPSでその価値も半減しちゃったかな。
まあしかし、だからといってルートファインディングの技術がいらなくなったわけじゃないですし、やはり山では正確な判断力が必要でしょう。