羅臼

羅臼―知床の人びと (野外の手帖)

羅臼―知床の人びと (野外の手帖)

厳冬期の流氷浮かぶ海に落ちたら、すぐさま這い上がらないとあっという間に凍死するとか。
海の深いところにいるバフンウニはあまり美味しくなくて、浅いところでコンブ喰ってるヤツがうまいとか。
北方領土はホントにロシアに不法占拠されているとか。


いろいろ勉強になります。
地元衆の話を中心に本が組み立てられ、経験者の含蓄のある言葉は、蝦夷の厳しさそのまま。


羅臼と言えば、武田泰淳の小説「ひかりごけ」で扱われる事件のあったところです。
最果ての雪と氷に閉ざされた知床に放り出され、社会と完全に遮断されてしまうようなトラブルがあれば、人は獣に戻り、仲間の肉を食べてでも生きようとするでしょう。
私もその立場なら、そうするかもしれません。
新田次郎「風雪の北鎌尾根」で書かれるほど、人は聖人君子であるとは限らず、生への執着は簡単に社会のタブーを破棄し得るだけのなりふり構わなさを含んでいます。
バイタリティーって、そんなにきれいごとじゃないんです。


自然相手の仕事は、厳しいのです。