「ニコン」という選択

私はマクロ狂ですから、マクロレンズにしか興味がありません。
等倍ぐらいですと、トータルとしての写りを気にするんですが、倍率がそれ以上上がると、それどころじゃなくなります。
解像してなければ話にならんのです。
グダグダな写りのレンズはゴマンとあります。現に何十本もハズレを引いてますし。
マクロの真髄は、「うわ!こんな細かいところまで写ってるよ!」というところにあると考えます。
印象写真も嫌いではないんですが、私は科学写真が好きですから。
高倍率マクロは、光学性能が命。極論では色やボケなんぞどうでもいい、と。
すると、メーカーは絞られてしまいます。

  1. 総合光学機器メーカーで、能力と実績のあるところ
  2. まともな顕微鏡が作れるところ
  3. 人情味のあるところ
  4. 製品の安定供給が望めるところ


ニコンは複写用レンズであるマイクロ 55/3.5 の上市以来、安定して高品位のカメラ用マクロレンズを送り出してきました。
マイクロニッコールを全部使ったわけではないのですが、今まで使ったマイクロニッコールにははずれがないのです。
マイクロニッコールは、ブランドに近い威光があって、それを支持できる実績があります。
そして、高倍率のマクロレンズは、コンシューマ向け製品が少なくなります。
広角レンズリバースの画質に不満を覚え始めたら、低倍率顕微鏡か高倍率接写向けマクロレンズしかありません。
顕微鏡は装置が大げさすぎます。野外で顕微鏡は無理ですからね。
で、高倍率のマクロレンズは、顕微鏡部門がないメーカーでは高品質の製品を作らせるのは難しいのです。
ってえと、国内ではニコンオリンパスしかありませんがな。


ニコンの商品の特徴は、ネーミングにあります。
特殊用途は、特殊用途向けのニッコールレンズを命名します。
半導体レチクル製造用、焼付け用の「ウルトラマイクロニッコール」、オプチカルプリント用の「プリンティングニッコール」、高倍率撮影用の「マクロニッコール」、複写用途の「レプロニッコール」、紫外線撮影用の「UVニッコール」。いくらでもあります。
こういう用途のレンズは、他社でも作っているのですが、ニコン命名戦略には及びません。
きちんと過去の業績が、半ば「伝説」となり、あきやんさんの様な導師によって掘り起こされるのは素晴らしいことです。
アマチャは、道具に凝るのが好きなのですよ。
そして、このような特殊用途のマクロレンズは、スペックを求めるが故に使用範囲の振幅が狭いのですが、用途に合わせて選んでやると、すごいんです。
「平面物を撮るレンズだから、立体物には向かない」?
それは収差補正が不十分なレンズの話。


オリンパスは前身が顕微鏡屋だったこともあり、マクロには強いのですが、その頂点は OM システムの時代にありました。
OM は 20mm から 135mm までの9本のマクロレンズを自動絞りで用意し、その高度なシステムは現在でも比肩するものがありません。
しかし、オリンパスはマウントを変えてしまいました。
すると逆に、OM の自動絞りは汎用性の低さからとたんに使いづらい過去の遺物になってしまったのです。
キヤノンもFDを捨てました。
ところが、ニコンだけは苦渋の選択で、Fマウント以降、長いあいだこれを押し通してきました。
私はここを最大に評価します。
古いベローズでも、苦もなく使えるのです。
裏切られ、見捨てられるのは、いやなものです。


それが「マクロはニコンだよ」ということなのです。
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(追記)、あ、高倍率マクロの話ですよ。普通の等倍までの接写は、ほぼメーカー問わずよく写ると思いますです。