オスミウム

金属オスミウムの貫入三連双晶です。やっとイタリアから到着しました。
蒼く、エッジの鋭い、美しい金属結晶。条線が素敵♪
osmium


この三連双晶を上から見ると、こんな感じです。
切妻屋根みたいな上末端を持った四角柱状の結晶が三つ巴で三連双晶を形成し、断面は六角柱状になってます。
パッキングは六方最密充填なんですが、条線から c軸が寝てるのがわかります。見かけ上の柱面が六角形の底面cです。
osmium2



かわいいよね。下の基板なんかツインだらけ。いくつわかります?
osmium3


これはこの間のイワンの作ったオスミウム結晶で、気相成長らしいんですが、からくりはまだ不明。
オスミウムは融点が3000℃以上あって、そう簡単に作れるものじゃないんですが。
四酸化物−金属の平衡を使ってるのかな?
教えてくんないんです。イワンのバカ!


原子量の最も大きい元素は、安定同位元素ではこの間のビスマスです。
密度が最も大きいものはビスマスではなく、このオスミウムイリジウムがトップ2で、誤差範囲で同じ。
22.6 g/cm3 もあります。エクスパックに目いっぱい詰めたら、多分60キロぐらいになるでしょう*1
小さくてもずっしり重く、大変硬い、石のような金属元素です。
日本では、北海道で比較的多く産し、イリジウムとの混じりの「イリドスミン」「オスミリジウム」、ルテニウムイリジウムオスミウムの混じりの「ルテノスミリジウム」が砂鉱として古くから採取されてきました。夕張のは有名ですね。
白金とは異なりますが、「砂白金」とされるのは、北海道では大部分がイリドスミンです。
硬く、化学的に安定で、紙面上でよくすべるので、万年筆のペン先に好んで用いられたそうです。
ついでに書いておきますと、天然でルテニウム単体がはじめて見出されたのって、北海道なんですよ。


白金族元素のひとつですが、白金やパラジウムに比べて化学反応での触媒能が低く、触媒としてはあまり用いられません。
以前は、四酸化オスミウムが炭素−炭素二重結合をきれいにシス酸化してジオールに誘導できる「オスミウム酸化」がもてはやされました。
が、酸化物は蒸気圧が高くて毒性も高く、触媒で回る反応に置き換えられ、今は脱オスミウムが主流です。
水銀反応なんかと同様ですね。
こういうのって、毒性が高い「危ない」試薬ほど、きれいにイクんだよな。
なお、金属には毒性はありません。


撮影レンズは、この結晶を作ってくれたイワンに敬意を表し、ロシアンマクロ LOMO Mikroplanar 40mm F4.5 です。これ好き。
イワンのベストの結晶は、単結晶で2cm近くあります。
さすがにそれはイワンは手放さないんですが、すごいよ。
「元素萌え」って擬人イラスト本がありましたが、やっぱり結晶モノは「萌え」ますね。
オスミウムの結晶なんてそう簡単には手に入りませんし、写真撮るのも骨なんですけれど。