寓話

  私のいるのはここじゃない。


  私のこころは、もうここにはいない。


  さびしい野山を歩いている。


  旅人はそそくさとわらじをはいて、


  自分のこころを追いかけるように、その家をあとにした。


  旅人はまた旅をしていった、


  また別の灯が見えるまで。


  なんとさびしいことだろう。


  かれはとどまることもなく旅をしていた。


  この旅人はだれだと思う。
  

  かれは今でもそこらじゅうにいる。


  そこらじゅうに、いっぱいいる。


  きみたちも大きくなると、


  ひとりひとりが旅をしなきゃならない。


  旅人にならなきゃならない。