ウラン

金属ウランは非常に酸化されやすく、鋼灰色の金属なのですが空気中ではあっという間にくすみ、最初に酸化膜由来の干渉色を示した後、そのうち真っ黒に変色します。
写真はガラス封管に閉じてあるもので、酸化膜をかぶった色と、しばらく放置した漆黒色が見えます。
u238
もちろん、核燃料の原料元素として有用で、天然存在比のウラン中に 0.7%含まれるウラン235を濃縮して用います。
非常に密度の高い金属でもあり、その特性を利用し、劣化ウラン弾として用いられたりも。
活性が高く高温で空気中だと酸化反応により燃え出し、周りに飛び散って後々まで環境に影響を与えます。


下の写真はチェコのピッチブレンドです。成分は二酸化ウランです。密度の高いずっしりとした塊の鉱物です。
和名では古くは瀝青ウラン鉱と言いました。
ぬるっとした光沢の漆黒の塊状になるため、これをピッチ(コールタールの固まったもの。アスファルト)になぞらえたのでしょう。
この産地、ヨアヒムスタール(ヤヒモフ)のピッチプレンドは、ボヘミアガラスの黄色い着色料としてもずいぶん用いられましたが、最も有名なのはマリー・キュリーポロニウムラジウム単離でしょう。
pitchblende
彼女は、ヨアヒムスタールのピッチブレンドが他の産地のそれよりも数倍放射線量が高いことを見つけ、それが新元素に基づくものであると確信し、10トン以上もの鉱石を酸処理後単離操作を行った末、ポロニウムおよびラジウム塩を単離しました。
彼女はそれがたたったのかわかりませんが、63歳で他界されています。


東京の床下に高線量のラジウムが転がっていたニュースが昨日から流れていますが、何に使われていたものなのでしょうね。
夜光塗料か、昔の医療用か。
いずれにせよ、相当古いものだと思います。


ウランおよびその化合物は、セシウムラジオアイソトープラジウムに比べはるかに非放射能が低いのですが、必要の無い被曝を避けるために、当スタジオでは鉛の容器に入れて鉄製キャビネットで保管しています。