灰重石

灰重石(かいじゅうせき)。代表的なタングステンの鉱石鉱物で、成分はタングステン酸カルシウム。
名前は、化学者シェーレ (Karl Wilhelm Scheele (1742-1786))の名前をいただいています。塩素とかアンモニアの合成で著名ですね。
これは、彼がこの鉱物から3酸化タングステンを生成単離したことによる命名です。
たまにこの鉱物を「シーライト」っていう人がいますが、やっぱり「シェーライト」って呼んで欲しいですね。


こっちは明延鉱山産。ゼノサーマル鉱床に育った、大きな結晶。
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明延では、メインでスズを掘っていたのですが、著量のタングステン鉱(特に鉄マンガン重石)を産しました。これは紙のように薄い結晶が多いです。


乙女鉱山産。飴色透明の美しい結晶。
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乙女鉱山は明治期からタングステン鉱を狙い、灰重石や灰重石結晶外形を鉄重石で置換した「ライン鉱」などが有名です。
乙女鉱山(旧乙女坂鉱山)の名前は、明治―大正期に鉱山から産した密度の高いタングステン鉱を黒平の集落に下ろす際、若い女性に担ぎをやらせたことにちなむのだそうです。
川沿いの坑道(A坑、D坑)から、無理矢理上の林道に上がる急斜面がありますよね。アレが乙女坂です。
そこを、下着を着けてない短い和服の女性がカマス背負って上がるので、下から丸見えだったんだそうで。
金取りがよかったんでしょうね。鉱山仕事は。
ちなみにそこから黒平集落まで、今の道でも歩いて3時間以上かかります。
BC坑のほうはかつては鉱区が違い、倉沢鉱山と言いました。


日本では、つい最近(2008年)まで喜和田鉱山タングステン鉱の稼行をしており、鉱石鉱物はこの灰重石でした。
これはつゆねこさんもマンガに描かれていました。
長原さんは、最近鬼籍に入られたのですね。ご冥福をお祈りいたします。
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