準結晶

2011年度ノーベル化学賞の対象になった、準結晶
東北大多元研の蔡先生にお願いし、いいサンプルを借りてきました。ありがとうございます!
結晶における大原則の構造要素である「単位格子の並進対称性*1」を持たないという、不思議な相です。
並進対称がないので従来の結晶ではないが、原子配列に長距離秩序があり、電子線回折では通常の結晶では出てこない5回もしくは10回回転対称の回折パターンが出てきます。
で、第一発見者のシェヒトマンはこの回折図形に直面し、ペンローズタイルのような結晶構造なのだろうという予想を立て、はたしてこれは正しかったのですが、最初のうちはいろいろ苦労があったようです。
お偉いさんに、存在を否定されたりとか。
卓越した観察眼による第一発見者は確かにシェヒトマンですが、準結晶のバラエティを系統的に研究し、安定な準結晶を数多く世の中に送り出してきたのが、多元研の蔡先生です。

今回、蔡先生に話をお伺いでき、とても勉強になりました。
ステンレスのルツボ(アルゴン雰囲気)に原料を収め、メルトさせて徐冷し、数日間かけてルツボ内で結晶成長させた後に、残りの金属融液(湯)を、溶けている状態で遠心分離で強制的に除くのだそうです!!
それから考えるに、非晶質のような熱力学的に不安定で、急冷により過渡的に出現するようなものではなく、れっきとした安定相で、相図に書けるような状態を持っているのでしょうね。


これが先生のお気に入りの標本です。テスト撮影ですが、ルツボの太さ1cmぐらいです。
quasicrystals
仙台から帰ってきて、あわてて一枚パチリと撮っただけなんですが、これをしばらく撮影してます。
おそらく、世界でも指折りの美しい準結晶の標本であることは間違いないでしょう。
面のきれいさがすごいんですよ。鏡のよう。
結晶では決して存在することのない五回軸を持っており、正12面体の結晶になっています。
よく見ると、その頂点が別の小さな面で切れており、これが卓越して育つと正20面体を構成する面になるのでしょうね。
面としては、以下の図とまったく同じです。切頭12面体ですね。これの切頭の部分が非常に小さいものとお考えください。

icosahedral対称のミラー指数って、どうつけるんだろう・・・。


で、けっこう脆そうなんですよね。先生の話では、準結晶って脆いんだそうです。
金属カルコゲニドとか、金属間化合物のイメージで扱ったほうがよさそう。

*1:単位構造があって、これが三次元方向に繰り返し配列することにより結晶が出来上がっていること。アウイの時代からスタートしている由緒正しき結晶の構造。