6,6-ジブロモインジゴ

いわゆるチリアンパープル、6,6'-ジブロモインジゴで正絹の縮緬生地を染めてみました。
染色は建て染め(バット染色)です。


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わりときれいにむらなく染まりますね。もう一回染めよう。


建て染め(バット染色)というのは、藍(インジゴ)のような不溶性の染料を、化学反応で一回可溶性の形にして染色し、繊維上でまた染料を再生して染めつける方法です。チリアンパープルの場合は、こう。


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チリアンパープル水分散液を、アルカリ存在下で、還元剤で処理すると、溶けなかったチリアンパープルが還元されたロイコ体(対カチオンはアルカリや還元剤から来る)になり、溶けるようになります。この液に布を浸し、空気中の酸素で酸化させると、またもとのチリアンパープル分子に戻り、こうなると堅牢に染まります。


ロイコ体溶液の写真。
leuco tyrian purple


蓋を開けると空気酸化されて、表面にチリアンパープルを生じます。
leuco tyrian purple
こいつは、蓋をしてほっておくと、瓶の中の酸素を使い切り、またロイコ体に還元されます。


藍ではよく使う技法ですが、チリアンパープルの場合、オリジナルのフェニキアンレシピでは、貝から採取した鰓下腺からの直接染色と、バット染色の両方をしていたみたいですね。
ただし、直接染色は光照射が必要なのに対し、バット染色では光は悪さをします。ロイコ体が光に弱く、臭素が脱離してインジゴになってしまい、染料が青みを帯びてしまうのです。

Bibliography of Tyrian purple
http://www.chriscooksey.demon.co.uk/tyrian/cjcbiblio.html