山で野帳を落とした。

今日の行程。


深夜、いくつか目星を付けておいた候補地を車で回るが、どこもかしこも山は雪だらけ。
日向は融けているが、日陰は積雪15cmもある。
何カ所か回るが、この状態では新規開拓はかなり困難。
あきらめた。雪が融けたらにしよう。


少し車を走らせて、ある有名な産地に向かう。
あそこなら雪は少ないはずだ、と。
古い調査図を送ってもらったので、既知の露頭とは別露頭を再発見する意気込みでドライブ。
眠いので、日が昇るまで仮眠。


日が昇ったら、紅茶を飲んで、捜索開始。
ここはペグマタイトで、現在までに5カ所ほどズリの分布を知っているが、実際にはもっとあるらしい。
既知のズリは、杉林の中に点在している。
何人もの採集者が掘り込んだズリを見て、「狸の巣穴みたいだなあ」と考え、はたと合点した。
「そうか!狸堀ってそういうことだったのか!」
何を今更。
知っているズリには手を付けないで、山の中を気の向くままに歩く。
風が強く、しかも軍手を忘れた。
かるかるバールを持っている手が凍える。
杉林で露出が悪く、しかも地面はカチカチに凍り付いている。
石もすべて土壌に張り付いて凍っていて、拾うことすらできない。
小石を拾うにもバールが必要。
融ける気配もない。
しばらく歩きまわって、何とか、ペグマタイト鉱床っぽい場所を見つけた。
石英塊が不自然なところに落ちているので、それっぽい。
しかし、掘るのは難しい。
しばらく誰も手を付けていないのは確実なのだが。
あきらめて、別の産地に行くことにする。


別の産地は、あまり知られていないペグマタイトで、columbite がたまに見つかる。
石英と長石のズリをしばらく探して、1cmぐらいのをみつけた。
石川山のバケモノに比べるとしょぼいけど、漆黒が魅惑的。
あとは 5mm の almandine ぐらいかな。しかも風化済。


そこから1kmぐらい離れたところで植林の杉を切り出していて、道路をすこし拡張した露頭にたまたま出くわした。
太さ40cmのペグマタイト脈が見える。
下にもペグマタイトの塊がばらばら落ちている。
アプライト脈も見える。
なぜか、磁硫鉄鉱ー鉄閃亜鉛鉱塊を見つけた。空隙には3mmぐらいの切頭4面体結晶も認められる。
脈には無いので、よそから来たのかなあ?
ペグマタイト脈は、小さな水晶があるぐらいで、叩くまでもない。


さらにペグマタイト三昧。
次の産地に向かう。本当に道路端。車から露頭が見える。
黒雲母を探す。短冊黒雲母ー長石を見つけ、黒雲母をはがす。
牙だ。牙一族だ。
あっさりとお目当ての鉱物を確保。
しかし、後が続かない。一個だけ。
露頭でガマを探す。この産地はこの山塊にしては珍しく、ガマが空きやすい。
3つ開けて、一つは奥行き5cm。3cmの煙水晶を確保。
透明でなかなかよろしい。もうちょっと大きいのが欲しいが。
頭の上の大石が今にも落ちそうなので、思い切ってハンマーが振れない。
こちょこちょっと、ガマの気配を狙って突っつく。
セリサイトみたいな締まったガマ粘土。長石結晶も一つもって帰る。


ペグマばかりも飽きるので、最後に15km離れた別の場所へ。
ここは初めてなのだが、古い文献にわずかに記述があったので偵察程度。
片岩中に走る真っ白な石英脈で、最大脈幅40cm。ほぼ垂直脈。延長はかなり長い。落ち葉でわからないが、50mは確認できる。
最近の訪人のあとは皆無。
探鉱した坑道跡が3つあるが、コンクリで封止されている。
落盤が怖いので、片岩の坑道に入るつもりもないけど。
金属鉱物は、小さな黄鉄鉱しかない。二次的な孔雀石もない。
残念。空振り。
ふと手に取った石英塊に2cmの水晶を見つける。
片岩の水晶はまともなものになかなか出会えないが、ここにはあるようだ。
これでもかというぐらい真っ白。牛乳の白。やる気を感じる白だ。
おろしたての白衣みたいな。
結晶面も光沢にあふれ、ツルンツルン。
透明感はまるでない。しかし、気に入ったのでガマをつついて包んで帰る。


いい温泉が見つからず、泥だらけのまま泥のように昼寝。
よく寝たら、深夜ドライブ。
くたびれた。
ほとんど採れなかったけど、楽しかった。
やっぱりガマ開けだね。一月ガマを開けないと禁断症状が出る。
ほじりほじり、つんつん、ガシガシ。