「風の耳たぶ」灰谷健次郎


風の耳たぶ (角川文庫)

風の耳たぶ (角川文庫)


妻の不治の病を抱えた老夫婦が、死に場所を求めてあてのない旅に出るという、重いが穏やかな内容の小説。


夫婦とは、老いとはなにか、ということを、真っ正面のちょっと斜めぐらいのところから向き合わせてくれる。


浜辺祐一の「こちら救命センター」に、こんな話があったのを思い出した。
ガンで余命幾ばくもない老人が、農薬を飲んで自殺を図ったところで救命センターに担ぎ込まれた。農薬は有機リン系で処置できるが、末期の胃ガンは処置のしようがない。家族もいない。救命センターの手当てにより一命を取り留めるが、二ヶ月後、その「人生の大先輩」は末期ガンの苦しみの中で、一人息を引き取る。はたして救急センターの行為は、正しかったのだろうか?


こちら救命センター―病棟こぼれ話 (集英社文庫)

こちら救命センター―病棟こぼれ話 (集英社文庫)


年寄りの自殺はよっぽどの事情なのでなかなか止められない。
若い世代の自殺がそうではないとは言わないが、最低限まわりに気を遣って欲しい。
アーケードをトラックで暴走するような真似はやめて欲しいね。
学会の開始時間ごろの、電車への飛び込み自殺も勘弁してくれ。


人の生は、死と隣り合っている。だからこそ生きていることに価値があり、世代を引き継ぐ意味があるのだろう。


おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒―江国滋闘病日記

おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒―江国滋闘病日記


オレはまだ、したいことがいくらでも残っている。自殺はまだ早い。