東大教授論文、実験を再現できず 調査委報告

http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY200601270205.html

 東京大学大学院工学系研究科は27日、遺伝に関係するリボ核酸(RNA)の専門家、多比良和誠(たいら・かずなり)教授のグループの論文について、4本とも再実験を求めた期限内に実験の再現性が認められなかったとの調査委員会報告書を公表した。大学院生の指導担当から多比良教授を外したことも明らかにした。今後、多比良教授の責任に関して、学内の懲戒委員会に審査を依頼するかどうか判断する。


 報告書によると、多比良教授らは期限の1月初旬までに2論文について再実験した。うち04年に発表した論文は結果を再現できなかった。03年に専門誌に発表した論文は再実験に成功したとして実験材料も提出したが、調査委は出された材料が元の論文と違ったことから再現性は認められないと判断した。残る2論文は再実験されなかった。


 平尾公彦・研究科長は「多比良教授は学者としての行動規範に反している。東大の信頼と名誉を傷つけ、責任は極めて重い。捏造(ねつぞう)とは断定できない。疑いは濃いが、証明は難しい」と述べた。


 グループの12本の論文内容に疑いをもった日本RNA学会が昨年4月に調査を要請し、東大に調査委が設置された。調査委は4本の論文について疑問点を指摘し、多比良教授に実験記録の提出を求めたが、そうした記録が残っていなかったため、9月に再実験を求めた。


 調査委は不正の有無について結論を出さなかったが、自ら疑いを晴らせなかったことで多比良教授らの論文は学界から信用を失った状態だ。大学院生の指導を外れたのは「事実上の研究室解散」(多比良教授)で、研究費の獲得も厳しい状態になっているという。


 多比良教授は「元の論文に記載ミスはあったが、故意ではない。ほかの再実験もまだ途中で、きちんとやればそれぞれ論文通りの結論が出る」と話している。


IFの高い雑誌の論文をありがたがる風潮がよくないのかな?