限りなく透明に近いブルー
テトラヒドロフラン*1をベンゾフェノンケチルでぐつぐつ*2。
3時間ほどすると、溜まった留分にうっすらと青い色が付いた。
↑色がはっきりとわかるようにややコントラストを上げてある。
本物はもうちょっと薄い青。
この玉は、800ミリリットル留分を溜めることができる。もちろん特注*3。
これは、蒸留釜の中のベンゾフェノンケチルラジカルが、溶媒蒸気と一緒に飛沫として上がってくると付いてしまう色。
つまりはきちんと分留されていないということなのだが、ケチルの色は濃く、簡単に留分にまで色が付いてしまう*4。
ただし、留分のこの薄い水色は酸素や水分で簡単に抜けてしまうので、かなり脱水ができていることの指標になる。
つまり、普通は不活性雰囲気があまりきちんとできてないので、飛沫が上がっても色が抜けちゃうということ。
アルカリ金属による試料の還元で生じたイオンラジカルの ESR 測定を除けば、このぐらい微量のベンゾフェノンは邪魔にならない。
シリンジで抜けば色の抜けてしまう、哀しいぐらい低濃度のブルー。
このテトラヒドロフランを使って、一つ反応を仕込んでみた。
*1:五員環構造を持つ環状エーテル。アクロニムは THF。オレの好んで使う溶媒の一つ。反応にも、液クロにも、再結晶にも、洗い物にも使っている。ただし18リットルで1.5万円する溶媒なので、安いものではない。
*2:エーテル性溶媒を脱水するために用いる手法。金属ナトリウムとベンゾフェノンというケトンをエーテル中で反応させるとナトリウムの電子がひとつベンゾフェノン側に移り、ケチルラジカルという真っ青なイオンラジカルが生じる。これは水分には鋭敏に、酸素にはマイルドに反応するので、これが存在する状態でぐつぐつ煮込むと溶媒の水が抜ける。
*3:炉吹きまでやらせた。今はフラスコの生地などは人件費の安い国で作っていることが多い。丸底の生地をアフリカの某国に作らせ、枝付けと主管の摺りあわせを国内で作るというパターンが多いようだ。
*4:ベンゾフェノン入れすぎとか、蒸留のパスが短すぎという意見は正しいです。玉がでか過ぎるのはオレの好みです。