ミンミンゼミの死

三時の休みにタバコを吸いに外に出たら、いきなり「ボトリ」と空から何かが降ってきました。

ミンミンゼミでした。メスかな。
壁にぶつかったわけではないのに。
ひっくり返ってじたばたしてます。
私は「ばかねーおまえは」と言いながら、そこに転がっていた小枝につかまらせました。
が、枝につかまることはできても、ひっくり返しの姿勢を戻すことはできません。



「うんしょうんしょ」



「それいけー」



「こてん」


正しい姿勢に戻しても、20cm飛び上がって落っこち、ひっくり返ってじたばた。
横ばいはできますが、もう飛翔することができないようです。
「ああ、こいつ、もう死期なんだな」と合点しましたが、じたばたしている姿は悲哀なものです。
私は彼女に何度か助け舟を出しましたが、どうしても起き上がることも、飛ぶこともできません。
やがてじたばたが断続的になり、彼女の体は虚空を掴むように次第に硬くなり、やがて動かなくなりました。


私は彼女に心の中で話しかけます。


私「いいダンナ見つかったかい?」


セミ「それがね、すごい男らしいダンナだったのよ。アレもうまいし。あたしいっぱい産んじゃった」


私「それはうらやましい!今度紹介してもらおうかな。仲良くしているところの写真撮らせて。」


セミ「それは嫌よ。他に当たってちょうだい。」


うまく繁殖できるといいね。
またね。


(追記)
彼女のなきがらをアリに食べさせる前に写真を撮ろうと思って、家にティシューでくるんで持って帰りました。
接写*1していてびっくりしましたが、ミンミンゼミの体毛って、ものすごくきれいな黄金色なんです。
金襴緞子です。

そっか、それはお前の嫁入り衣装だったんだね。


真ん中の赤い3つの玉は単眼です。攻撃色ではありませんよ。

真紅で透明。ピジョンブラッドのルビーのよう。

*1:私の中では等倍以下の拡大率は接写とは言いません