おかえりなさい

ある静かな夜に、家に帰ってきたら、真っ黒な猫が車のボンネットの上に座っていました。


彼女は


「おかえりなさい。これからどこにいくの?」


って寒そうにいいました。


私は、彼女の f = 1.2 まで開いた真っ暗闇の瞳を見つめながら、


「どこだろう?オレにもわからないや。」


と答えました。
その回答を待っているようでしたから。


彼女は夜の住人。目久尻川の霧が凝縮した夜露のなれの果て。
懐かしいものがあるべきところに戻っていく霧の夜の幻。