感染パーティー
って、豚インフルエンザの話*1じゃなく、ホメオパシーがらみです。
http://voise.ti-da.net/e2413474.html
ブクマをたどってこのブログを読み、私はかなりヒキました。
おいおい、それ、天然痘の予防に牛痘を種付けするような話ですよ。西暦1800年ぐらいの科学よ*2。
学校保健法第二種指定の伝染病を、わざわざ危険な手法で引っ張ってきてどうするのか、と。
本人だけならともかく、自分の子供で人体実験してどうするのか、と。
それを種々の伝染病でするんですか?
頼むから、ホントに頼むから自分だけにしてください。
ホメオパシーに関する私の意見を再度書きます。
ホメオパシーってのは、例の超高希釈溶液が薬効を示すというアレですね。
10倍希釈を100回繰り返し、ってヤツです。
溶質を適当な操作で振りながら何度も何度も希釈すると、薬効の高い薬ができるんだそうで、もとの分子は平均で1分子も含まれてないんですが、水が記憶しているんだそうです。
(なお、水の水素結合のメモリー効果は、50フェムト秒で消えるってのが数年前に報告されてます。Ultrafast memory loss and energy redistribution in the hydrogen bond network of liquid H2O, M.L. Cowan, B. D. Bruner, N. Huse, J. R. Dwyer, B. Chugh, E. T. J. Nibbering, T. Elsaesser, and R. J. D. Miller, Nature, 434, 199 (2005).)
ちなみに、分析屋のA先生の言葉では「水は(極性物質に対する)最良の溶媒である」でした。
水は、混和しづらい有機化合物を除き、大なり小なり、なんでも溶かしちゃうんですね。
極低濃度なら、二酸化ケイ素だろうがアルミナだろうが金属だろうが、ほとんどの物質を溶かします。
海水にウランが含まれているとか、温泉水に金が含まれているとかって話がありますよね。
あれがその顕れで、さまざまな物質およびイオンを溶かし込んでいるのです。水は。
むしろ純粋な水(純水)を作る方がはるかに難しくて、超が付くような純水は、ほっとけば簡単に汚れてしまいます。
半導体産業でしばしば用いられますが、ホンモノの超純水は、ちょっとでも流れを止めたらダメなんです。ピン詰めなんてとんでもない。
流れが止まると、その時点で配管材料が多く溶け出して水を汚すので、超純水配管ってのは水の流れが止まらず、淀みや袋小路を作らないように工夫されています。
そのくらい、水っていろいろなものを溶かし込むクセがあるんです。
機器分析には「検出限界濃度」というのがあります。
装置や原理上の都合で、これ以上低濃度では分析できないよ、という閾値なんですが、もし検出限界がない分析機器があったら、ありとあらゆる元素や、様々な分子が溶け込んでいるのがわかるでしょう。
海に、コップ一杯の水を加えて、完全に撹拌できたとします。現実には無理なんですけど。
で、撹拌後に海水をコップ一杯(180 ml: 10.0 mol)汲んだとします。
オリジナルのコップ一杯に含まれていた水分子が、どのくらい入り込んでくるでしょうか?
これ、計算で簡単に出ますが、800分子ぐらい入ってます*3。
例えばあなたが朝飲んだコップ一杯の水には、私のションベン由来の水分子がものすごい数入ってます。ジミ・ヘンドリックスがドラッグでキメ損ねて吐いた嘔吐物由来の水分子もあるでしょうし、ウェス・モンゴメリーの飲んだバーボン由来のもあるでしょう。
そのぐらい、分子ってのは小さく、数が多いのです。
ホメオパシーの人は、そういう様々な溶質による影響をどう説明するんでしょうか。
そういう数多の水の履歴や、種々の極低濃度の溶質を無視し、なぜ都合のよい成分(しかも、いるんかいないんかわからない量しかない)の効力だけを妄信できるんでしょうか?
「サクセシング *4してないから意味ない」?おまじないですかそうですか。
ホメオパシーってのは、ホントに論理的に破綻しているんです。
まあ、プラシーボ効果ってのは非常に強く出ることが知られてますんで、思い込みの力を馬鹿にするわけじゃありませんが、そういうのは自分だけでやってください。
決して、別個の人権を有する自分の子供で試さないように。
子供がかわいそうでなりません。児童虐待ですよそれ。