シリアツブリガイと貝紫

貝紫の原料になった、シリアツブリガイ(アッキガイ科)の貝殻です。
Bolinus Brandaris


Bolinus Brandaris
Cagliari gulf, South Sardinia, Italy


多くの変種が入っています。
Bolinus Brandaris var. trispinosus
Bolinus Brandaris var. coronatus
Bolinus Brandaris var. cagliaritanus
Bolinus Brandaris var. tritubercolata
Bolinus Brandaris var. nivea
Bolinus Brandaris var. polii


かつて、紀元前1500年ぐらいから、地中海のこの貝をフェニキア人が大量に採取し、貝の内臓(鰓下腺(さいかせん))中の前駆体から酵素の力で生成する 6,6'-ジブロモインジゴを紫色染料に用いたことがありました。
1つの貝から 1 mg ぐらいの色素しか取れないので、大量に採り、一時期は浅いところの貝はみんないなくなったんだとか。
この染料、貝紫、帝王紫、古代紫、チリアンパープルなどと様々な名前が付いています。オレは「チリアンパープル」が好きなんですが、貝紫が一番わかりやすいのかな。


この鰓下腺には、チリンドキシルと呼ばれる置換インドールが入っており、これを空気と日光にさらすとジブロモインジゴに変化します。
この時に、低分子量の有機硫黄化合物(ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン)などを放出します。そのせいで、この染色プロセスは実に悪臭がするのだそうです。
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