時間が欲しい

doublet2004-11-12

採集に行きたい場所はいくらでもあるのに、時間が無い。
時間が欲しい。一年ぐらい。
まだ見ぬ産地がオレを呼んでいる(いや、呼ばれてないか)。
資料ばかりあさっていると、「ああ、こんな所に鉱山跡があったのか」と、夢ばかりがふくらんでしまう。
「きっと、この鉱脈をねらって地表を追跡すれば、このあたりに露頭が出ているにちがいない」とか。
しかし、遠すぎる。日帰りじゃ難しい距離だ。
どこでもドアが欲しい。


オレの理想の石掘り。
地元のじいちゃんから話を聞いて、藪をかき分け、汗だくになりながら水を飲む。
誰も来ない山の中で、一人にぎりめしを頬張り、地図を見ながら現在地を確認。
資料のコピーと現地でにらめっこ。
転石であたりをつけ、滝を登り雑木の稜線を越え、露頭を見つける。
しばらく誰もハンマーを当てていない気配だ。崩落土砂に半分埋まっている。
露頭にはいくつも崩れガマがみえる。中はキラキラの水晶がはがれ落ちている。
よくわからない鉱物もいくつかある。有識者に見てもらおう。
やっぱりこんなスタイルの採集に一番ヨロコビを覚える。


たとえ、見つけたものが小さな水晶たった一つだったとしても。
そしてその一つの水晶は自分の宝物として、標本箱に入る。
なんにも見つからないときは、「まあ、今まで気になっていた場所をチェックできたし、
温泉にも入ったし、悪くはなかったな」と考えることにする。




最後のケースがかなり多いのは、開拓によくあること。
これが大嫌いだと、人の後ばかりを付いて歩くようになる。
宝探しなんだから、いつも見つかるわけではないと達観できるようになると、気が楽になる。
どうしても空振りが嫌だけど、新しい所を見つけたい人は、地道に資料を集めるるしかない。


資料にあるなら新産地じゃないけどね。
そういうケースは少なからずある。
苦労して産地を探し当てたら、大昔の文献(例えば明治のとか)に詳細な実測地形図と坑内外図が載ってる場合とか。
この間もあった。亜鉛の調査報告だった。かなりがっくりきた*1
でも、珍しい鉱物が転がっていることもあるので、旧産地の新産出ということになる。


みんながみんな、古い産地の再開拓をしたら、面白いだろうなあ。
で、みんなWeb上に詳細な産地案内を載せる。
いっぱいあるので、好きな所を選んでいける。
でも、そんな状況は来ないだろう。
きれいなものを産する場所に通いつめる人はやはりいるしね。
ピカピカのクロリトイドより、ピカピカの紫水晶の方が、一般受けする。
より大きくて珍しくてきれいなものに惹かれるのは当然のことだろう。
オレだって、もちろん大きくて珍しくてきれいな標本が好きだ。
あなたもそうでしょう?
一日以上歩く産地より、車横付けの方が疲れなくていいじゃないですか。


近頃再発見されたある産地に通いつめる人たちは、こう言った。
「インターネットに産地と標本が出ちゃったので、人が多く来るようになるから、採れなくなる前に採れるだけ採っておく」
この発言に、少なからずがっくりした。
本音なのはわかるけど、みんなで分け合おうよ。
いいのが欲しいのはわかるんだけどさア。
もう、すごくいいの採ったでしょう。何個も。それで満足しようよ。
ズリも薄いんだし、そのペースで掘ったら、あっという間に採れなくなるよ。
やっぱりWebに情報を漏らさないようにするっているのは、無理な話だよ。これだけ便利なんだから。
しかも、ここって、君らが見つけた場所じゃないし*2
でも、そうは言わなかった。
喧嘩になるし、言っても聞くタイプの人じゃないから。
結局、帰り際に近場の不明産地を教えた。この話は前に書いた。


昔昔に良標本が出たけど、今は場所がわからない。こういう産地をいっぱいリストにしておくと
新規開拓しようとする人が増えるかな。
桜井先生が前に書いてた、「幻鉱」ミニ版みたいなの。
きちんと元論文も適当な方法で引用して、みんなで開拓近況を報告できるようにする。
でも、良産地が見つかった瞬間、箝口令が敷かれ、情報は全て消されたりするんだろうな。
ウーン。難しいなあ。
大昔の情報を大量にWebに流しっぱなし、著作権法に引っ掛からない程度に文献の引用をするってのは、ありかな。
そんなのが何百となく羅列されていたら、狙い所も散るだろうしね。
幼稚な考えで申し訳ない。
あとはもう、情報を限られた信用のある人にしか流さない方法ぐらいだろうか。いつもの通りだけど。
新規参入者は、敷居が高くって嫌気さすだろうが。
同好会単位でクローズドにするっていうのが一番手っ取り早いかなあ。


しばらくかかって資料とにらめっこして鉱山の坑道の位置や鉱物産地をリストアップしてみた*3
東日本だけで3000以上ある。まだまだ出てくる*4
詳細な場所がわからないのもいくらでもある。
なのに、特定の産地にみんなが集中することもないと思うんだよね。


きれいごとを書こうと思ったわけじゃないよ。本気の本音。
そして、もう一つの本音。もんのすごい山奥で見つけた産地で思うこと。
「この産地は、そう簡単には詳細な場所を教えてやらん。綿密な文献調査をして、
この場所に狙いを定めて、ここまで上がってきたやつだけが祝杯をあげられる聖地だ。」
オレは心が狭いでしょうか。狭いな、きっと。
だって苦労したんだもん。ちょっとぐらい教え渋ったっていいじゃん*5

*1:まじめに文献調査しろって意見もあり

*2:発見者が採れるだけ採集していいとは言っていません

*3:手に入る限り調べた。手記みたいなのから同人誌、学術雑誌まで

*4:鉱物産地を入れたら星の数程でるだろう。岩石を構成しているのは鉱物なんだから

*5:しかし、結局大収穫が嬉しくって、人に自慢し、情報を漏らすことになるのがいつものパターン