水晶と石英ガラスとパイレックス

石英ガラス*1パイレックス*2を触っただけで判別できる」という、ガラス細工のプロの誇る技術について、数人をつかまえて試してもらった。
石英ガラスとパイレックスの同じ肉厚の直径 8 mm の管を用意し、観察させずに握ってもらう。
断面を見るとわかってしまうので、断面はガムテープで隠した*3


ひんやり感が確かに違う。これは、熱伝導度の差による。
ちなみに、室温付近では、石英ガラスで 1.38 W/mK, パイレックスで 1.10 W/mK の熱伝導率が報告されている。
石英ガラスのほうがわずかに熱伝導率が高く、ややひんやりしている。

2本を比較すれば、手の感覚がよほど鈍くなければ、だいたいの人が判別することができるようだ。
人間の手は、このぐらい微妙な熱伝導度の差でも、感知できるものらしい。
すげえ。


では、比較ではなく、一本のガラス管のみを差し出されたとき、判別できるだろうか?


で、やはりこれを試すと、比較してすぐの時に試料を出されると、ひんやり感の記憶から、判別することができる。
ところが、30分もすると、あまり当たらなくなる。
比較対象が無いので、わからないのだ。


絶対音感相対音感のようなものだろう。
相対的に判別することは、わりと簡単。
でも、絶対的な熱伝導度を当てることはかなり難しい。
まさに、プロの持つ技の一つだということを実感。


ほとんどの人が触ったことの無い石英ガラスの棒に初めて触れてもらう。
断面が違うので、管とは熱の伝わり方がかなり異なる。
判別はかなり難しい。当たらない。
がんばって判別しようと粘ると、手の熱が試料に伝わってしまい、よけいわからなくなる。


では、大きな石英ガラス塊と水晶ではどうか。
表面はいずれもボコボコの破断面。
水晶のほうは少し結晶面が出ている。


微妙に違う?・・・ほとんどわからない!!*4


水晶では、c 軸方向と軸に垂直の方向では、熱伝導率がかなり違う。
軸方向に平行で 10.4、垂直で 6.2 だから、感覚のいい人なら c 軸方向がわかるかもしれないのだが、実際はそうでもないようだ。
表面の形状などの条件にすごく左右されるらしい。
見た目や触り心地から、情報がインプットされるということは、あるだろうな。
同じ形状のもので比較しないとやっぱりダメ、ということになる。


やっぱり、試料を同一形状に切り出して研磨して、揃えないとね。


一度、石の「パワー」とか「バイブレーション」とかがわかるって言う人にお願いして、テストしてもらいたいなあ*5
本当にわかるんだろうか?
水熱合成の水晶と、天然の水晶の違いがわかったら、本物だろう。
結晶学では、その二つの区別はつかないのだから。


少なくとも、オレにはまったくわからなかった。


今回の結論:形状が同じなら、人間はわずかな熱伝導度の差でも比較することが可能。
      絶対評価は、訓練を積んだ人なら可能かもしれない。
      形状が違うものでは、比較にならない。

*1:非晶質の二酸化ケイ素

*2:代表的な理化学用ガラス。成分的にはホウケイ酸ガラス

*3:ちなみに、石英ガラスは断面が灰色で、肌がわずかに波打っている

*4:しばらく遊んでみて、頬に張り付けると比較的わかりやすいということがわかった。しかし、それでもまだ間違える。

*5:左右のキラリティの区別まで付くらしい。