石綿

上の写真は嫌われ者のアスベスト。これは直閃石の石綿


石綿の有用性は平賀源内が広めたと言われている。
鉱物性の繊維で、耐熱性がすこぶる高く、比較的柔軟な繊維を形成する。
耐候性、耐薬品性は極端に高い。
これを化学的に分解しようと思ったら、むちゃくちゃ濃いアルカリで煮るか、フッ酸を使うしかない。
加えて、(種類にもよるが)蛇紋岩の存在する場所にはそれなりに産する。
耐熱性の繊維として、日本の高度成長期に与えた経済効果は大きい。
これの代わりになる天然繊維は、そう簡単には見つからないし、合成も容易ではない。
安価に簡単に手に入り、加工も使用も容易で、使うと劇的な品質改善が望めた。
そのような理由から、ついこの間までさんざもてはやされたのだが、その潜在的な危険性が大衆の知るところとなり、あっという間に大騒ぎになっている。
小学校でちょっとでも使っていたのがわかると、避難。


石綿が危ないという事実はすでに戦前から知られていた。
オレも、鉱物採集を始めた頃から知っていたが、石綿付き金網はさんざん使った。もちろん採集にも行った。
たぶん、今知られている石綿の危険性をそのときのオレに教えたとしても、きっと採集に行ったと思う。


アスベスト禍に関しては、国が悪いのか、企業が悪いのか、効果があるまで警告を発しなかった学者が悪いのか。
そもそもどのくらい悪いのか。温石綿もダメなのか、リーベック閃石はもってのほかなのか。
どういう使い方なら大丈夫で、どういうのが悪いのか。
調べてもオレにはつかみきれない。判断もできない。
これは公開シンポジウムにでも行って最新の動向を掴むしかない。
それすらどんどん変わっていくだろう。


様々な物質には利点と裏返しの欠点が存在し、これは鉱物にも、合成有機・無機化合物にも、天然物にも医薬品にも必ずある。
今回のような騒ぎがあると「鉱物だからすべて危ない」「化学合成された医薬品や調味料は危険だが、これは植物からとったから大丈夫」という、分類をひとからげにした考え方に陥りがちだが、これは大部分が間違った考えなので気を付けたい。
すべては使い方次第で、アスベスト禍は安全性の判断と対策に不十分な点があったために起こった。
うまくモノを使うのは本当に難しい。


石綿が原因で体を悪くされた方には心底同情します。