サンプルが違う!

http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060121/eve_____sya_____009.shtml

 東京大の多比良和誠教授(53)=生命化学工学=らが発表した論文の真偽に問題があり、再実験を求めた東大調査委員会に対し、教授側が論文とは異なる試料を使って実験し「(論文の内容を)再現した」と報告していたことが二十一日、分かった。


 調査委は教授らの「再実験」を偽物と判断、元になる論文は捏造(ねつぞう)だったと強く示唆する最終報告書を週明けに発表。大学側は近く懲戒委員会を開いて処分を決める。


 多比良教授は細胞内で病気の遺伝子が働くのをリボ核酸(RNA)を使って妨げる「RNA干渉」の研究で国内トップクラスとされる。教授は「論文の実験も再実験も助手が行った」と述べ、自らの関与を否定している。


 関係者によると、問題とされたのは二〇〇三年二月、海外の専門誌に発表した論文。RNAを切る人の酵素「ダイサー」の遺伝子を、環状遺伝子(プラスミド)に組み込み、大腸菌でダイサーを作り出すことに世界で初めて成功したとした。


 日本RNA学会は昨年四月、この論文を含め英科学誌ネイチャーなどに掲載された十二本を「実験の再現性がない」と指摘。これを受け設置された調査委に対し、教授側は当初、実験ノートや試料がないとしてきた。同十一月、実験で使ったプラスミドが見つかり、十論文の主執筆者となっている助手が再実験し、再現できたと報告した。


 だが提出されたプラスミドは論文とは違う位置に酵素の遺伝子が組み込まれ、大腸菌酵素を生成しやすい別の株を使っていることが判明した。


 教授側が故意に異なる試料を使ったかどうかは不明としている。


 韓国では世界初とされたヒトクローン胚(はい)からのES細胞作りが捏造だったことが発覚したばかり。競争が激しい最先端の生命科学研究での相次ぐ不祥事と言える。


 ただ、韓国の場合は技術そのものが否定されて患者を落胆させたが、RNA干渉に必要な酵素ダイサーは別の研究者がその後、製造方法を確立し、RNA研究への直接の影響はないとみられる。


 ■多比良和誠・東京大教授の話 論文では酵素の名前を間違えて記載してしまったと、二十日夕方に助手から聞いた。単純な記載ミスで、週明けに調査委員会に報告する。あまりにも単純なミスでチェックできなかった。再実験は論文作成時の実験と同じ方法で行われている。


論文12報分のデータが、一つの実験で出ているのかな。