透明度と色

学生さんと反応混合物の色の話になる。


オレ「その反応は、やってみるとビールビンの色みたいな褐色透明溶液になるはずだけど。」


学生さん「たしかに褐色ですが、透明ではありません。」


オレ「透明じゃなかった?塩が出て濁っていた?」


学生さん「塩は出ていません。濁ってもいないです」


オレ「じゃあ透明な溶液じゃないか。」


学生さん「でも透明じゃないです」


オレ「???」


よく勘違いされるのだが、透明度と色をごっちゃにする人がいる。
色は吸収スペクトルの問題であって、透明度とは何の関係もない。
例外は黒と白で、光が可視光全域でほとんど透過できない状態を黒といい、可視光全域で乱反射または屈折するのを白という。また、媒質表面ですべての波長領域の光を乱反射せずに反射する場合、銀色という名になる。
透明度は、媒質中の屈折率の異なる粒子あるいは組織によって光が散乱もしくは吸収されるときに減ずるもので、透明、半透明、不透明の区分がある。
だから、「濃青色透明」(たとえば逸見石とか、硫酸銅五水和物とか)「黄色透明」(たとえばレグランド石とか、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとか)という色と透明度の表現ができる。
でも、人によっては「色が付いたら透明ではない」と思いこむタイプがいて、彼にとっての「透明」は「無色透明」のことだけらしい。
さすがに鉱物を相手にしている人はそういう勘違いはないのだが、化学の人は結構多かったりする。


だから、「限りなく透明に近いブルー」(村上龍)もすごく変なタイトルで、ほとんど無色に近い青なのか、濃青色なのか、青緑なのか、まったくわからない。
著者の意図するものは一番最初のものなのかもしれないが、逸見石だって「限りなく透明に近いブルー」だぞ、とツッコミを入れたくなる。
「限りなく無色透明に近いブルー」としてくれればオレも悩まずにすむのだが。


ちなみに、逸見石ってこんなの。
http://store.yahoo.co.jp/specimen-lapiz/henmiilite.html
ひゃくまんえん?!
Ca2Cu[B(OH)4]2(OH)4, triclinic, P-1 (#2), Z = 1。
カルシウムと銅の含水ホウ酸塩鉱物。
この数年で価格の大暴落を起こした鉱物標本。