初めての家出

家に帰ってズームレンズを全部バラして弄んでいたら、実家から電話がきました。
オフクロです。なんか暗い喋り口なのです。
この人がこういう口調で話を切り出すときは要注意で、およそは訃報か病気入院の知らせです。
私は「いやだなあなんなのかなあ」という不安を鉛レンガ20cm厚ぐらいで遮蔽するような気持ちで話を聞いていたら、上の姪(高校1年生)が家出したというのです。
「家出って、どこによ?」と聞いたら、私の実家(彼女にとっては爺婆の家)に駆け込んでいるんだそうです。
なんだそりゃ(笑)。


私のネエさんは私とは性格が逆転しており、水と油、濃塩酸とキシレンぐらいの違いがあります。
ネエさん(彼女にとっては母親)のやり方が気に食わなくて飛び出してきたというのです。
うちの姪は感情的になるとモノを壊すらしく、電話を壊し、家具を壊し、挙句の果ては県営住宅までが彼女のクラッシャブルゾーン。
分厚い窓ガラスまでその牙を向け、結局は割れた窓ガラスで指の筋を切り、手術入院後家出したんだそうです。
何で女の子がそこまで野生を剥き出しにブチ切れるのか私には謎だったので、とりあえず青年の主張を聞くべく実家に向かいました。
他の大人が説教するとすぐ逃げちゃうかふてくされるかするらしいのですが、姪は叔父さんっ子なので、私の言うことだけはそこそこ素直に聞いています。


彼女の(母親に対する)主張及び要望は以下のようなものです。

  1. 携帯電話の通話上限リミットをなくして欲しい
  2. 頭ごなしに「勉強しろ」と言わないで欲しい
  3. 門限の7時を、3時間延長して欲しい
  4. たまに外泊するのを許可して欲しい
  5. あたしばっかり叱らないで、たまには妹を叱って欲しい

んだそうです。青年期キーワード盛りだくさんです。ナウなヤングだなあ。
一つ一つの請求項について、裏を取りながら洗っていきます。
しかし、それは無理が多いです。異議申し立てが多くて取引成立しないんです。
キム・ジョンイルかよおまえは。


しかし最近の高校生は仕事が光速ですね。吉野家だってそんなに早くできませんよ。
私が実家に弓月光の古い少女マンガばかり置いておいたのが悪かったのでしょうか*1
私はその年頃の時は、好きな人とうまく仲が結ばれずに悶々としてて、「セックスって何だろう?喰えるのかそれ?」とか考えながら石を探して藪漕ぎしてました。
この間、オシメを換えたばかりなのに、もう繁殖期ですよ。
ちょっとうらやましいですが、まだビギナーなんだから、実践に移る前に恋愛論理論武装しろと。
まだオッパイの硬い高校一年生がナマ言うなと。
しかし、私も年頃になったら、繁殖に係る行為の実践研究を日々研鑚琢磨していた経歴がありますので、姪に偉そうな顔で「節度のある交際をしなさい」なんてね、死んでも言えませんよ。
それはネエさんも同じなんですが、それはばらさないでおきましょう。長電話も門限*2も同じです。
守護霊が草葉の陰で「ちょwwwwおまwwww」って笑いますよきっと。
それでもネエさんは説教できるんだからすごいよなぁ。
親ってのはそんなものなのかな。きっとそうなんでしょう。


まあ、思春期の恋愛は、「自分を見て欲しい、理解されたい」という感情の裏返しのケースが多いので、6時間ぐらい彼女の言いたいことや日頃考えていることを聞いていました。
大人になるってむずかしいです。
大人になるって行為を年齢制限して、「18歳になるまで待ちなさい」と不連続な成長条件に填めるのがそもそもの悲劇で、本来は精神的生長は連続的なんですよね。
大学で学生を見ていると、しみじみそれを感じます。
行為自体は経験済と未経験の二種類しかないから、不連続なんです。
結婚や出産もそうだし、性行為も就職もそうですよね。
でも、気持ちはそんなにいきなりホップ・ステップ・ジャンプできるものじゃないみたいで。


そんなことをいろいろ話しながら、日曜日は姪と鉱山跡で水晶を掘ってました。
次に家出したら、うちに来るだろうなきっと。
でも私はそんなに甘くないです。私の家では私が法律です。
民主主義の「み」の字の最初のひと書きもない、筋金入りの独裁国家なのです。

*1:http://d.hatena.ne.jp/doublet/20041113#p1

*2:私は「鉄砲玉」と呼ばれ、飛び出したら家に帰ってこない習性があったので、門限はありませんでしたが。