凝集

ナノメートルサイズの粒子を分散担持させたポリマーをしばらく作ってました。
もちろん新開発品です。
これを使ってみたいという人に渡したのですが、あとで「溶けねえぞゴルァ」とクレーム。
あれれ、おかしいな、そんなはずは無いのに。
いろいろ調べてみましたが、ポリマーに対する粒子の占める重量比がある値以上になると凝集が始まっちゃうらしくて、そのタイミングが読めません。
どうやらナノメートルサイズの粒子が、その高い表面積のためにポリマーのネットワーク化の触媒になるみたいです。
これ以上は秘密保守義務のために書けませんが、か〜な〜り触媒能は高いみたいです。
ただし、均一相ほどじゃないですし、このぐらい小さいとろ過では回収できないので、それほどメリットがあるというわけでもなさそう。


なお、10ナノメートル程度以下の粒子は、バルク固体とはかなり異なる化学・物理的性質を示します。
生理活性も当然異なるでしょう。
そのような点から、ナノメートルサイズの粒子状物質に対して、最近は自主規制が厳しくなりました。
フラーレンをあるメーカーから多めに買ったら「何に使うの?撒いちゃダメだよ」という内容の問い合わせがむちゃくちゃしつこく来ました。
要するに、化学合成したもののナノメートルサイズのものは安全性*1がよくわからないんで撒かせるなよ、ということのようです。撒かねえよそんな高えの。
その種のナノメートルサイズの粒子の生体に対する安全性調査は国*2が動いてます。
この種の議論は欧米で多くなされていますが、ちょっとまだ白黒付けかねている状況のようです。
それはそうで、たとえば二酸化チタンを例に取れば、結晶の多形、粒子のサイズ、粒子の形によってかなり生理活性が異なってくるでしょう。
それをさまざまな物質について調査する必要があります*3


医薬・化粧品のように人体に用いるものもありますので、その種の用途に関しては安全性の調査は重要です。
ただ、ナノメートルサイズの分子や粒子なんてゴマンとあって、空気中をふよふよいくらでも飛んでいるので、合成物だけ調査するなら片手落ちでしょう。
13 km/h オーバーのスピード違反でキップを切られた人が「なんでオレだけ捕まえるんだよ。みんなもっと飛ばしてるじゃん!」って憤慨するのと同じ理屈です。


イノベーション25の「安全と安心」ってのは曲者です。
安全は客観、安心は主観なのです。
そんな無茶な。
ちなみに、無茶は客観で、無理は主観です*4

*1:ナノ毒性というらしい。

*2:国立環境研が最大手。

*3:そんなお金も手間もかかることを外注したら、身の毛もよだつような請求書が来ちゃいます

*4:軽井沢シンドロームにそう書いてありました