正しい図鑑写真

よく、接写の写真評で言われるのが「図鑑写真になってしまっている」という言葉です。
私、この言葉があまり好きではありません。
逆説的に使うことはあります。
被写体以外をフレームに何も入れずに状況説明をせずに、被写体の情報だけを伝えようとすると、そういう風にいじめられることがあるのです。
しかし、それはそれで重要なんです。
芸術風撮影では、被写体の情報がぜんぜん入っていなかったりとか、よくあります。
もちろん、両方盛り込められる神のような人もいます*1
科学写真では、必要な情報が充分に写真に盛り込まれてなかったらダメ写真。
必要以上に入っていて、わかる人が見ると被写体の持つ科学的な意味合いや位置付けが理解できる写真で及第点。
「モノではなく光を切り取る」とか、構図とか、そんなものはどうでもいい(ホントは良くない)んです。図鑑では。
何の感情も思考も意図も加えず、私の知る被写体の情報+αを伝える写真、これが私の写真の理想です。


図鑑写真風ライティング、図鑑写真風背景、図鑑写真風構図を目指して、図鑑写真の技術を探ってみました。


ライティングは3方向、一つはホワイトバウンス、二つはスポットで。
背景色は伝説の「科学のアルバム」御用達の青バック。
被写体が影を落とさないよう、かつバックの色が被写体に強く照り返さないように被写体と背景を25cm離し、バックの色を出すためにもう一本背景用フラッドを足します。
バックの色のライティングが強すぎると被写体に色が照り返して写り込んでしまいます。
背景色は右下を少し明るめにして、左上を暗く。
ステージは厚みのある長ガラス板です。
レンズは Printing Nikkor 95/2.8A (f = 11), ベローズ PB-4、カメラは D80 をマニュアルで使っています。
これ以上の図鑑写真向きレンズはないかもしれません。


被写体はパキスタンのファーデンクォーツ。c 軸方向を左右にして、中の白い糸にピントを合わせています。
まだ成因のはっきりしていない水晶なのですが、Min. Rec. の説明では、岩盤のひび割れが少しずつ広がりながら熱水による結晶成長を起こしたものとされています。
中に入っている白いスジは、その拡張方向を示しているのだそうです。
こればっかりは自分でガマを開けないとわかりません。


faden quartz 1


faden quartz 2


faden quartz 3


平板な写真ですね〜。平板水晶だから当然なんですけど。
とにかく撮影台のガラス板の上の埃が写っちゃうので、これはブロアで執念深く落としたほうがよさそうです。
背景の色とスポッティングは後でこだわってみます。

*1:超広角を使って被写体に寄りつつ深い被写界深度を生かして周りを説明するのや、マクロレンズ開放で被写体のほんの一部にカリカリのピントを合わせて、それ以外を全部ボカしちゃうのが、「非図鑑写真」だと思わないでくださいね