究極のマクロレンズ・至高のマクロレンズ

この1年ほど、世界中の高倍率マクロレンズを買いあさり、チェックしてきました。
どこかに、夢のように最高によく写る高倍率マクロレンズがあるというのを思い描いて。
私の理想とする高倍率マクロレンズの条件は、以下の通りです。

  1. 開口径もしくは絞りで規定される回折限界まで、きちんと解像する
  2. 焦点距離に応じた適当な拡大倍率で残存収差が非常に少ない良好な像を結び、かつ、その倍率範囲が広い
  3. コントラストが高く、フレアおよびゴーストを生じない
  4. 階調、色の再現性が良い。入射した光の波長成分を正確に合焦する
  5. 非合焦の残存収差の状況が素直で、クセなく美しくボケる
  6. 適切な作動距離(working distance)がある
  7. 作業性・操作性が良好である


しかし、それは幻想でした。そんなものは存在しないのです。
無限遠−等倍までなら何とかなります。ここまでは多くのカメラレンズメーカーが必死に開発しています。
等倍以上の光学系は物理現象の限界である回折によって解像力が決まってしまい、この限界付近で様々な光学系のアラが目立ちます。
S-Orthoplanar は色の出が悪く、マウントがヘンで、しかもボケがキレイではありません。
Ultra micro nikkor はワーキングディスタンスの確保が難しく、多くの色収差を残し、色がおかしくなります。
短焦点ルミナーおよびマクロニッコールは暗く、開口径が小さいために開放でもピクセルまで解像できません。
Printing Nikkorはマウントが難しく、解像力を損なわないように最小絞りが F11 まで。当然被写界深度が稼げません


それほどまでに高倍率マクロというのは設計が難しいのです。
しかも、現在ではそういう民生用レンズを光学機器メーカーが開発しなくなりましたから、もう将来性がありません。
Rayfact は私費で買うには高すぎますし。
そういう分野は顕微鏡の出番です。
しかし、顕微鏡ではコンデンサ絞りで被写界深度を稼ぐものが多く、不透明な物体をエピライティングで開口径をいじれる機種はそう多くありません。
あるにはあるんですが、レンズ単体では作動しないのです。顕微鏡ステージは操作性に問題があります。


理想に一番近いのは、Printing Nikkor 95mm F2.8 の2倍側でした。
こいつの性能はカメラの CMOS, CCD のはるかに上です。
しかしこれはお世辞にも使いやすいレンズではありません。
AI-AF Ultra Zoom-Macro Nikkor ED 10-120 mm F1.8 ELWD ってのは無理なんですね。


もうひとつわかったのは、やはり性能を平均したら、古いレンズは新しいレンズには到底太刀打ちできません。
それが可能になるのは、古いレンズがある種の用途に特化した設計がなされている場合のみです。
古いレンズは硝材も古く、凝った設計もできず、当然実力発揮できる性能の窓が狭いのです。
新しいレンズは性能の窓を広く取ろうと努力してますから、複雑な光学系になり、オールラウンドを求めるが故にピンポイントでの光学性能が古いレンズに比べ劣っていることがあるようです。
MP-E より Luminar 63mm の方が解像力が高いケースがあるのは、これによるのでしょう。


というわけで、これ以上を求めるなら AZ100 を買って、これのステージを改造するしかなさそうです。
それ以前に、ライティングをきっちりして、白黒ケントで光をいじり、絵を作る方がはるかに意味があるかと。
写真ってのは光の遊びですからね。
あとは、被写体の選択ですよね。
結晶は大小問わず相似形ですから、でかい結晶があれば撮影がよほど楽になります。
それと、用途に応じた解像度があります。
ウェブ用写真や小さな本に用いる写真には、ピクセルまで解像した写真は必要ないのです。


レンズ沼たぶんこれで卒業しました。
あとはのんびりと、必要に応じた最近のレンズを買い足していきたいと思いますです。
この結論に達するまでに何百諭吉も使っちゃったぜ♪