虫に追われて

虫に追われて―昆虫標本商の打ち明け話

虫に追われて―昆虫標本商の打ち明け話


昆虫の標本商のドタバタ劇半分、残り半分は「標本商はつらいよ」のようなものだと思ってください。
非常に読みやすく、「そうだそうだ」と共感すること多し。
というのは、鉱物標本のギョーカイにそっくりなのです。
資料集め、採集の苦労、趣味と学問の境界、インターネットオークションの光と陰、コレクターが死んだら標本はどうなるか。
みんな、ことごとく鉱物の世界と同じ根の問題を抱えています。
違いを挙げるとしたら、「鉱物の稀産種の同定は、機器分析の力を借りないとキツイ」のと、「鉱物標本は、どれほど数があっても同一のものが存在しない」のと、「昆虫は本質的に数が多く、環境をととのえてやるとどんどん個体数が増える」ところでしょうか。
あとはホントにそっくりです。
この本、鉱物標本のギョーカイにいる方にぜひ御一読をお勧めしたいですね。


んで、この本にはあまり書いてない(ちょこっと書いてある)ことなんですけど、一つもの申します。
最近、仁義を知らない方が時折いらっしゃいます。
研究者がコツコツ調べてメシの種にしているものに横から手を出して、(研究に手がついているのを知っているにもかかわらず)研究者に連絡もせずに「研究の成果である」情報をもとにして商売のネタにしたり、情報をばらまいたりするのはいけません。
これ、学問の世界でやったら爪弾きですよね。もちろんですよ。
人の手が付いてるところは、論文化するまで手を出さないっていう不文律があります。
最初に手がけた人が研究者ならなおさらです。
商売上手で知名度があり、情報に価値を賦与することができるとか、そんなのは関係ないです。キャリアもね。