遭難事故

tett_k2 さんもこの間おでかけの大雪山系で大規模遭難。3ヶ所で10人が亡くなられました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090717-OYT1T00218.htm?from=main4&from=yoltop
ご冥福を祈ります。
3ヶ所でというのは、よほど気象状況が良くなかったということでしょう。


一番多く人が亡くなられたツァーのルートは、おととし tett さんとお会いした後に遡行した沢の真上です。
逃げ場の非常に少ないルートで悪天候に遭い、無理に行動してトムラウシの温泉までのきつく長い下りを強行しようとしたが、トムラウシまでの上りで体力消耗した、という感じのようです。


http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/177789.html

大雪山系ツアー主催会社「装備問題ない」 (07/17 14:06)


 旭岳からトムラウシ山への縦走ツアーの主催会社、アミューズトラベル(東京都千代田区)は、社員が徹夜で登山客の安否情報を収集する一方、松下政市社長が17日朝、東京を出発、午後に十勝管内新得町に入った。同社によると、ツアーに同行した札幌営業所のガイド多田学央(たかお)さん(32)は、今回と同様の縦走をこれまで5回経験。他のガイドも登山経験は豊富だったという。また、同社のトムラウシ山登山ツアーは今回が17回目。同社は今回の事故を受け今月中に開催を予定していた同様のツアーの中止を決めた。


 ツアーは、一定レベルの登山経験がある人が対象。装備も冬山登山と同様の防寒具やアイゼンの用意を呼びかけた。食料は避難小屋での宿泊を想定し、レトルト食品などを各自持参していたという。


 同社の高千穂有康営業課長は「ツアーの日程に無理はなく、装備も問題ない。ガイドは最善の判断をしたと思う。天候が予想以上に悪くなったのではないか」と話した。

生きて帰るのが大前提。
「想定外」っていいますが、どういう想定だったのか知りたいところです。この長くエスケープルートのほとんどないコースで。
しかも、低気圧と前線が通過するよって状況で、森林限界が低くて、風が強くて、霧が深くて、気温の低い北海道の山で。
疲労凍死は「無理な行動」「ビバーク装備無し」「防寒着と着替え無し」という状況からしばしば発生します。
本当に最善の判断だったのか、状況が正確に把握できたら、もう一度よく考えてみましょう。
リスク評価は、考えられる最悪の事態を想定し、それを回避するため+@のアクションを用意します。
このプラスアルファで、想定外の事態を回避するのです。「生きしろ」と言ってもいいでしょう。


レトルトってのは、普通の山屋は持ちませんよ。重いですから。


http://www.asahi.com/national/update/0717/TKY200907170203.html

 残りの参加者9人は別のガイドとふもとを目指した。疲労から集団に追いつけない参加者もでて、集団はやがてばらばらになったという。このガイドは参加者2人を連れて下山し、その後、再び1人で山に入ったという。


 自力で下山した愛知県清須市の戸田新介さん(65)の話によると、出発した時点で風がビュービューと吹き荒れていた。「こんなので大丈夫なのか」。不安に思ったが、計画通り出発した。数時間後に1人目が倒れ、その後、次々とメンバーは脱落した。「起きないと死んじゃうぞ」。戸田さんは体調を崩したメンバーに呼びかけたという。


 倒れたメンバーとガイドを残し、体力の続くメンバーは先に進んだ。しかし戸田さんは集団のペースに追いつけなくなり、1人で取り残されたという。夜になり、いったん歩行をやめて雨風をしのいだ。17日午前3時半に再び歩き始め、登山道の入り口に来ていた救助の車に出合った。

それはまさに八甲田山死の彷徨。
どうしようもない天候不順ってのは、ときに起こります。
しかし、今回の大パーティーは、構成から考えて仕事をリタイアした中高年でしょうから、予備日が取ってあればヒサゴ沼避難小屋での停滞沈殿の選択肢を取るべきなのではないかと。朝から強風雨なら。


私の考える山行の保安。

  1. 地図は必携。読図能力も。人にルート決定を頼るな。稜線の上なら地図表示可能な GPS は最大の武器。
  2. 防寒着と雨具も必携。持たないのは自殺行為。逃げ場がなければツェルトも持とう。
  3. 山は標高差 1000m で気温が 6℃下がる。強風下では体感温度はさらに低下。濡れた衣服、強風雨、ツェルト無しが最悪のセット。
  4. 下着は綿は不可。化繊か毛が良し。汗で濡れた綿の下着は自分の体温を極端に下げる。
  5. 迷ったら、来た道を迷う前まで戻る。どんなに自信があってもショートカットしない。
  6. 体力温存は重要。体力が残ってないと正常な判断ができなくなる。体力を使い切るまで行動するな。
  7. 活動時間は夕方4時まで。迷ったらなおさら。お茶を沸かして飲んでから次の日の予定を立てよう。
  8. 気象状況が不安ならすぐに下山。やばい時は登るな。天候次第で山の難易度は極端に変化する。
  9. 状況が悪ければ次の機会を待て。無理な行動は禁物。明日の仕事と自分の命と、どっちが大事?


といいつつ、いつも危ない目に遭う私です。単独行はね。
学生さんを大勢連れて山に行くときは、難易度を一番身体能力の低いコに合わせます。
当然、私や元気な男の子にとってはお散歩コースになります。それでいいのです。
不慮の事態でも、一番体力のないメンバーが、体力を使い切ることなく安全に下山できるコース選定って、意外と難しいのよ。