ヤマアイ

小さい娘とねぼすけさんを連れて、ヤマアイ(トウダイグサ科)を探しに行ってきました*1
林床に生える多年草で地下茎を有し、かつて日本にタデアイの藍染めがなかった時代にこれを使って染めた、という噂があります。
「葉山に生えているよ」という内容のブログがあったので、その情報を頼りに探してみました。
林道わきの杉林の林床に簡単に見つかりました。いっぱい生えてて、拍子抜けしました。
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Mercurialis_leiocarpa_yamaai_ヤマアイ
Mercurialis_leiocarpa_yamaai_ヤマアイ

Mercurialis_leiocarpa_yamaai_ヤマアイ


雑草っぽいですよね。雑草なんですけど。
ただ、分布を詳しい方にお伺いしてみると、神奈川県下のヤマアイって、最近になって相次いで報告されたが、人為的な分布拡大の可能性がありそうだ、という推測も。
ここのヤマアイも、林道の真横に、範囲100m ぐらいの間に生えているだけで、それ以外の場所は探しても見つかりませんでした。
で、一番密集しているところをよく見ると、林道の路肩が崩れたのを補修するために、土嚢がいっぱい積んであります。
どうも、この土嚢の土に地下茎がまぎれて、どこかからやってきたのかな、という感じがしますね。単なる勘です。
土嚢袋の腐り方からすると、まだ20年経っていないぐらいでしょうかね。
ただ、三浦半島は何ヵ所もヤマアイの報告があるので、三浦半島にヤマアイが分布しているのはどうも確かなようです。


掘ると、真っ白い地下茎が出てきます。
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これを乾燥させると、濃い藍色になります。ただし、地下茎の表面のみ。
ヤマアイ


この青い色素は、なんと共鳴安定化したシアノヘルミジンというアニオンラジカルのアルカロイドだという話です。
マジかよそんな安定なんかよ、って思いますよね。でも文献にはそう出てきますね。
ホントなのかしら・・・。
hermidin


これの銅媒染にトライしたんですが、見事に敗退。


ヤマアイを銅媒染で染められる、という事実を突き止めたのは、辻村氏です。
このご本です(レアな本で、すごくプレミアム価格が付いています)。

万葉の山藍染め

万葉の山藍染め


(文献)

  1. 辻村喜一, 萬葉の山藍染, 染織と生活社, 1984.
  2. 増井幸夫, 神崎夏子, 植物染めのサイエンス, 裳華房, 2007.
  3. 西川廉行 (著), 奥洋治 (写真), 萬葉植物の技と心, 求龍堂, 1997.
  4. 佐藤幸治, 長谷川正男, “ヤマアイの染料色素について”, 文化財の科学 1986, 31, 18-23.
  5. K. Abe, T. Okada, Y. Masui, T. Miwa, “Synthesis by benzilic acid rearrangement of the 2-oxo-3-pyrroline dimeric alkaloid of Mercurialis leiocarpa”, Phytochemistry 1989, 28, 960 .
  6. K. Abe, T. Okada, Y. Masui, T. Miwa, “Diastereomers of the 1,5-dihydro-2H-pyrrole-2-one dimer, a neutral component of Mercurialis leiocarpa”, Chem. Express 1990, 5, 13–16.
  7. P. Haas, T. G. Hill, “Mercurialis. I. The development of a blue pigment on drying”, Biochem. J. 1925, 19, 233–235.
  8. E. Ostrozhenkova, A. G.-Goldhirsh, A. Bacher, W. Eisenreich, “Biosynthesis of hermidin from Mercurialis annua: A retrobiosynthetic study”, Phytochemistry Lett. 2010, 3, 33–37.
  9. (a) P. Lorenz, M. Hradecky, M. Berger, J. Bertrams, U. Meyer, F. C. Stintzing, “Lipophilic constituents from aerial and root parts of Mercurialis perennis L.”, Phytochemical Anal. 2010, 21, 234–245. (b) P. Lorenz, J. Conrad, S. Duckstein, D. R. Kammerer, F. C. Stintzing, “Chemistry of Hermidin: Insights from Extraction Experiments with the Main Alkaloid of Mercurialis perennis L. Tracked by GC/MS and LC/MSn”, Helv. Chim. Acta 2014, 97, 1606–1623.

*1:正確には、ねぼすけさんと娘は公園のアスレチックで遊んでました。おとうさんだけ山にいきましたとさ。

受賞講演

しばらく(もう10年ぐらい経ちますかね)写真を撮ってて、文を書いたり展示したり、一般に対する化学の啓発活動をしてたので、それを評価してもらって、以下の賞をいただいてきました。
https://www.jucst.org/award.php


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どうもありがとうございますー(賞金めあてとか言ってはいけない)。
受賞講演では、会場係がプロジェクターの電源コードを蹴っ飛ばして抜いたり(復帰するのに5分ぐらいかかりました)、いろいろありましたが、まあ何事もなく済ませてきました。
副賞を貰いましたが、ねぼすけさんの電動自転車になりました。まあ、これでいいのだ。

bicycle_and_daughter

キハダ

島根から大量のキハダ原木を送ってもらって、週末に皮剥いて染め物してたんですが、なかなかこれ、光に弱いですね。
染めた瞬間はものすごく綺麗な緑がかった黄色で、これは太陽光中の紫外線によって色素ベルベリンが強い緑色蛍光を発してるからなんですが、紫外線によって簡単に光分解してしまいます。
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写真右が、日中の太陽光に晒していた状態(左はアルミ箔で遮光した)なんですが、無残に変色してしまっています。


なかなか弱いヤツなのです。


kihada


原木断面が右。表皮が二重構造になってて、外皮がコルク質、内皮が繊維質で、ここに色素がたまっています。

二年ほど前に、藤沢のぷーままさんのところで忘年会宴会をしたのですが、その時の招待者間のご縁ができたようなのです。
それが展開した形での、湘南〜東京湾ストランディングをしているまさかなさんのトークイベントに出向いてきました。
悪いおじさんたちの飲み会の話が延長して、イベントになったということです。
悪いおじさんその1である、MWS の中のひとも、楽しんでおられたようです。
http://micro.sakura.ne.jp/mws/t_2018_01.htm
まさかなさんが悪いおじさんその2であって、じゃあオレが3なのですよね。


帰りに、天王洲アイルにある PIGMENT 社によって、和紙と墨を買ってきました。
顔料が目をひきます。数千(四千ちょっとって言ってたかな)あるらしいです。

紙袋がなかなかかわいいです。