doublet2004-11-16

ID の由来

ID の由来について、問い合わせがあったのでここに書きます。
doublet は二つで組になっているもの、もしくはその片方を指します。
オレは二枚組レンズを想像して ID を決めました。
いわゆるダブレットレンズです。三枚組はトリプレットです。
ダブレットレンズはトリプレットに比べて収差類の補正が甘いです。
それが味だという人もいます。
ルーペなんかでは、トリプレットは当たり前*1、2群4枚構成もざらなので
ダブレットは安物ですね。
球面収差がひどいか、色収差がひどいかで、あまり良いものではありません。
野外調査なら、無くしても惜しくないので、安物がいいのですが。
そういうわけで doublet です。オレが野外で無くなっても惜しくないでしょ?


ルーペで思い出すのですが、昔カールツァイス*2で、変な繰り出しルーペを売っていました。
3群5枚構成で、群ごとに独立して繰り出せるようになっていました。5倍のときは1つ繰り出し、8倍のときは2つ繰り出し12倍のときは3つ繰り出し、互いに重ねる構成だったと記憶しています。
そんな無茶な設計なのにもかかわらず、収差が各倍率でそこそこに
補正されていて、視野も広く、よくできてるルーペでした。
ルーペなので、カメラレンズのハンパ材を使っているのだろうと思うのですが
さすがに自社にガラス工場のある会社は違いますね。
もちろん光学設計は妥協の産物なのですが、妥協するレベルが高いのです。
国産にも似たようなものがありましたが、それはただの両面対称の球面レンズを
重ねるだけの、設計もへったくれもない子供のおもちゃでした。
ドイツ人の職人魂をひしひしと感じるものだったのですが、採集でなくしました。


今使っているルーペは、2群4枚構成、対称型。バルサム張り合わせです。
性能が良くて値段の安いものを作ろうとすると、このタイプになるんでしょうね*3
確かに安くて視野が広く、手入れしやすいですが、バルサムがはがれることが一回ありました。


化学の世界では、ダブレットといえばプロトン NMR スペクトルでおなじみです。
イソプロピル基(通称イソプロ)はダブレットとの格闘になります。


結晶学では双晶はダブレットとは言わないんだよね。twin といいます。
双子ですね。両者が等価な関係にあるからかな。


宝石では、オパールの張り合わせものなんかで使います。
二枚ならダブレット、三枚ならトリプレットです。
薄くて厚みが取れない石とか、地の色を変えたいときに張り合わせるようです。

本日の写真


昨日と銅つながりで、tyrolite です。産地は大分。古くから知られた場所。
水色の部分に真珠光沢の結晶があるのですが、この写真では全くわかりませんね。

*1:普通はルーペの設計って対称にするのですが、そうでないのもあります

*2:ドイツの光学機器メーカー。ドイツでは Leitz 社と並んで有名。

*3:どちらから覗いても同じ性能が出ます。パーツの数が最少で済み、張り合わせてしまえばレンズは1種のみになりますので組み立てが楽です。スぺーサーも一つですし。いわゆるハイゲンス型接眼レンズの設計をいじった形です。